このアルバムは、ブリティッシュポップの流れを汲むヒネリ(毒気)の効いたメロディーとサウンドをベースとし、
楽曲の端々に細やかな音の仕掛けをふんだんに施して、緻密で計算され尽くした作品を創り上げるポップマエストロ、
という松尾清憲のイメージを、良い意味で覆してくれる作品と言えるでしょう。
収録された全ての楽曲に"歌=歌心"が溢れており、本来、彼が創り出す楽曲の一番の聴かせ所である凝ったサウンドも今回は少し控えめで、
"歌"を最大限に活かすことに重きを置いたアレンジがより一層、楽曲の素晴らしさを引き立てています。
そういう意味で今作は、過去の作品群の中で最も"歌"を大切にした、ボーカルオリエンテッドな作品と言えるのではないでしょうか。
そして、いつも以上にブリティッシュポップとアメリカンポップスの要素がバランス良くブレンドされたサウンドもポイントだと思います。
奇しくも、ビーチボーイズのオリジナル
セッションによるアルバム"Smile"が間もなく発売になりますが、
"One More Smile"という
タイトルといい、"Caroline No"な"Dear Mr. Sunshine"や
タイトルソングといい、ホント、ナイスタイミングです。
また、デジパック仕様のケースとポップなアートワーク、ブックレットに数点掲載された本秀康氏のイラストもとても可愛くて、
フィジカル盤を手に取る楽しみを再確認させてくれる素晴らしい装丁もポイントが高いですね。
二十数年来の盟友達が中心となっているバンド、Velvet Tea Setsによる、良い意味で耳障りの好い柔らかなサウンドと、
温もりに溢れた楽曲が詰まった、まさに、聴く度に笑顔がこぼれてしまう好盤です。
松尾清憲入門編にも最適な一枚だと思います。