心の社会
この本はすばらしい本です。人工知能をどう実現するかという目標に向けて、さまざまな分野の知見に支えられた統合的な心のアーキテクチャを提案しています。曖昧すぎるなどの批判もありますが、発想を妨げず、かつ正確に伝わるような抽象度で、ひとつひとつの節が非常によく考えられ洗練された文章で書かれています。あまりに深い内容が、あまりにさらっと書かれていることに感動すら覚えます。人工知能に興味を持つ人ならば、一読ならぬ二読、三読をお勧めします。
問題解決の心理学―人間の時代への発想 (中公新書 (757))
人はどのようにして目の前の問題を解決しているのかという大きな命題に対する考察です.問題解決のプロセス(理解,解決,吟味)において,人間のどのような心理的機能が使われ,それらがどのように連携しているのか,非常に難しい問題です.この問題が解明されると人間と同じ感情や柔軟な解決能力を持ったコンピュータやロボットが誕生するのでしょう.
本書では,石を山頂に運ぶ仕事をする男,ブラジルへ移り住む女,二十四の瞳の子どもたちといった文学作品の主人公たちを例にして問題解決の諸問題を解説していますので,難しい問題ながら読みやすくなっています.
心と脳――認知科学入門 (岩波新書)
我々人間を人間たらしめている心の性質に迫ろうという試みは、非常に古い時代からあったろうが、現代の諸科学の分野は科学的にそれを可能にしつつある。本書はその入門であるが、しかしまた同時に議論の最前線を示したものである。
その核となるのが情報科学の進展であるが、そこから種々のテーマに議論が展開していくが、ともすればもっともらしい「エッセイ」で終わってしまいそうなテーマに対しても、明快な問題設定と手法で、そのメカニズムに迫っていく。「創造性」や「社会性」といった、よく使われるものの、定義の難しいキーワードにもバッサリと切り込み、今後の社会的展望までも筆が及ぶ。「認知科学」に関する一通りの知見が得られよう。
一見流し読みすると、さほど難しい、目新しいことを述べているように見えないかもしれないが、それだけ深いテーマを平易に論じていることに気づくべきである。じっくり読めば読むほど、我々自身の認知に迫る営みの奥深さに気づくことになろう。