津軽のふるさと~ある古い歌の伝説
塩田美奈子は歌の上手い人ですね。昭和の歌謡曲やミュージカルなど幅広いレパートリーを苦もなく歌いこなしています。国立音楽大学大学院オペラ科を修了し、1988年にイタリア声楽コンコルソ第一位、シエナ大賞を受賞しているプリマドンナです。
その持てる実力を如何なく発揮したアルバムなのは間違いありません。発声も素直で、伸びやかで美しい中音域を巧みに使用しながら、収録曲を違和感なく綴っています。
タイトルの「津軽のふるさと」は情感たっぷりで聴きほれる歌唱でした。胸に迫る表現を聞くに連れ、ひばりファンも満足する出来映えでしょう。歌詞が明瞭で、雰囲気も情感も伝わってきます。
アンドリュー・ロイド=ウェッバーの「メモリー」や、「エビータ」より「アルゼンチンよ泣かないで」が歌われています。1989年に二期会公演「椿姫」の主役ヴィオレッタでオペラデビューする前年に、劇団四季「オペラ座の怪人」のカルロッタ役でデビューしている経歴からみても、ミュージカルの巧さは折り紙つきです。
「一晩中踊り明かそう」でも同様で、透き通るような高音の伸びやかさと聴きやすい音色がいわゆる一般のクラシック歌手とは一線を画し、図抜けていました。
榊原大のアレンジによる「黒百合の歌」は、哀愁が漂い情感もあり、昭和という時代の雰囲気すら上手く表現出来ていました。三枝成彰作曲の「花の乱」は聴き惚れましたし、大中寅二の「椰子の実」は現代的な味わいを感じるような抒情歌曲でした。コンサートでの拍手喝采が目に浮かぶような作品集だと思いました。
リーフレットには、歌詞以外に三枝成彰氏の推薦の言葉と長田暁二氏の解説があり、彼女の大小様々なポートレイトが所収されています。
破戒 (まんがで読破)
同和問題(当時の背景を考えると敢えて「部落差別」と呼んだ方が的確かもしれない)に一石を投じた、近代文学の金字塔。
夏目漱石の「坊ちゃん」「吾輩は猫である」や、芥川龍之介の「羅生門」などといった超ド級に有名な作品に比べ、「破戒」は非常に重い社会的なテーマを扱っているため「有名だけど、あんまり読んだこと無い作品」なんじゃないでしょうかね。そういった意味で、未読の方はこの一冊を是非読んでいただきたい。非常に高い水準で漫画化されており、原作に漂う重苦しい空気や人間性の発露、主人公の悩める姿や、悩みの果てに新しい時代を切り開こうとする情熱などが丹念に描かれていて、読後感は極めて爽快です。
「まんがで読破」シリーズの中でも、小説分野としては「失われた時を求めて」「カラマーゾフの兄弟」などと並ぶ良作。
ムカつく奴は、とことんムカつくツラに描かれてたりして、原典を読んだことがある方でも、なかなかの出来栄えで漫画化されている事にご満足いただけるんではないかと。
破戒 [DVD]
この作品は、不思議なことにスリルが有る。
俳優さんや監督さんの技術が優れているという事もあるが、
内容が差別問題であるという事がその要因だと思う。
被差別者であったが為に傷心し、悩む主人公の小学校教師。
同じ人間でありながら同じ日本人でありながら、区別され、
それを隠さなければ今の立場から転落するとう恐怖。
これは単純に恐怖と言って過言とはならないだろう。
教師になるという夢を手に入れ、一生懸命に生きていたのだから。
主人公が最後の方で、行動を起こして見せる。
勇敢にも人柱となって、行動を起こしたという事である。
それは、いままでの行動が実を結ぶ瞬間なのだが、本人にとってはそうでは無い。
教師として主人公の身の回りの絆が全て無になる瞬間でもあるからだ。
人柱となり火の付いた屋根を支えた柱は、
たとえ家が焼けたとしても、その魂は永遠に不滅であると思う。
人にやらせるのではなく、自分でやらなければ、論ずる資格なしだろう。
「この主人公が最後に立つ所、いきつく所は、いったい何処になるのだろうか?」
終始、それを考えて観ていた。
皆様に是非みてもらいたい映画である。
Piano Nightly
優しく、切なく、寂しい一枚。だけど、明日もがんばろうって思える。
どうしようもなく落ち込んだとき、車の中でこのアルバムを聴きます。「虹が出たなら」、「愛について」、「恋は桃色」、こんな曲たちに追い打ちをかけられて、そしてどん底から引きあげてもらって、顔を出したところにアッコちゃんのほほえみが待っている、そんなアルバムです。(よくわかんないよね、すみません)
破戒(韓国本) (世界文学全集25)
この話を読むと良くわかるのだが、この世の中から、人間の意識から差別を完全に無くす事
は、まず不可能である。だが、それでも人を差別するのは民主主義社会において最も恥ずべき行為の一つなのだ。人間の場合、自分より下の人間を作ることによって、プライドを保って生きている面がある。『破戒』においては、そのような描写が赤裸に綴られているので、是非読んで頂きたい。