なるほど高校数学 三角関数の物語 (ブルーバックス)
いわゆる学参ではないが、三角比・三角関数の基本事項を解説した読み物。何とか大学に合格したはいいが、数学を使う学部にもかかわらず高校数学の基本事項をおろそかにしたまま来てしまって不安だという人がメインターゲットだろうが、一部検定教科書における配列と異なる部分に目をつぶれば高校生にも十分理解できる内容なので、ここで紹介させてもらうことにする。
筆者自身が最も目をひかれたのが、ケプラーが惑星の軌道をどうやって楕円だとつきとめたのかを解説した部分。実は「正弦定理」のような数学の考え方を使っていたのだが、その具体的な方法に触れたのは(恥ずかしながら)筆者もはじめてで、ひさびさに感動してしまった。どうしても、高校生のあいだは「なっとくして、ほんとうに理解できる」ことよりも入試に出題される問題を解く(というより、処理する)ほうにどうしても重点がいってしまうので、基本事項をしっかり理解したり、過去の天才がどうやって世紀の発見にたどりついたかを追体験したりする余裕が少ない。筆者自身も指導者として授業ノルマ消化のためについついそういう授業をしてしまうことが多いので、反省しきりであった。
少し前に「高校数学+α 基礎と論理の物語」というタイトルの本が出ていて、それと混同しそうなタイトルでもあるのだが、多くの著者がこの手の本に需要を見出しはじめたあらわれではないかと筆者は勝手に推測している(学参と銘打つより、大学生から社会人まで幅広い層をターゲットにした方が売り上げが見込めるという理由もあるのかも知れないが)。「オイラーの贈物」(海鳴社)を超える名著は果たして現れるか??