銀行員のための統合リスク管理入門
内容は銀行の総合リスク管理の本である。現代のように上場企業であればIR情報をインターネットで即時開示することが、株主に対して常識となっている時代においては、取引先企業が破綻し貸し手の銀行側としてはそれを有税・無税半々で償却を期中にしなければならない現在の税法においてオフバランス化される大口先の金額さえ見えている。それは来年3月の決算へのオフバランス化された融資金をいかに他で回復するかのスタンスまで最終的には暴けることになる、と言うことなのだ。
オンバランス・オフバランスどちらの資産においてもその価値を計量化し、計量化されたリスクの時間的推移において考えるというものだ。若干のニュアンス的なぶれはあるかもしれないが、VaR(Value at Risk)という考え方である。それは今現在のBIS基準による自己資本比率基準による尺度の考え方をかなりの面で否定し、真の安全性・健全性を計る尺度としてバーゼル委員会が現在考えている尺度でもあるということだ。
貸出を行っている先の一部は必ず倒産するものである、という基本的なスタンスがここには貫かれている。そのリスクが発生する割合を財務比率等で算出した信用格付でどの程度発生するかを自分のところのデータとして持っていることが、これからはとても重要になってくる。つまり現在は帝国データバンク等の機関が提供している倒産確率に基づいて算出している毀損率(一般的に過去3年分を計算して算出されているであろう)に対して自行で蓄積した信用格付別倒産確率データが低ければ、当然それを適用することでその金融機関の毀損率は堂々と下がり、融資のロスが少ない金融機関としてIR的に評価は上がるということが予想される。毀損率が下がれば貸倒引当金に適用している率も堂々と下げることができる。つまりは引当金を減らすという金融機関の逼迫した課題に直結できることを意味しているのだ。
現在の金融機関を苦しめ、破綻させているもの、それは実は貸倒引当金と配当性向にあると僕は考えている。なぜならりそな銀行の破綻した原因は自己資本のかなりの部分を占めていた貸倒引当金が利益が計上できなくなったために監査法人がみとめないと言い出したからだ。足利銀行においても同様だ。監査法人も現在では監査に不備があれば監査法人自体に法の裁きが下るように法改正されたために必死だ。そして監査法人にしても金融庁にしても関東財務局にしても日銀にしても求めているのはエビデンス(証拠)なのだ。毀損率を下げることが許される証拠。それは大口不良債権先を数多く抱える大銀行ではなく、小さな銀行にこそ生きるエビデンスだと僕は考えている。
ともあれ銀行のリスク管理部署においては必携である。これからどうなっていくかが見えてくる。
民事執行の実務 不動産執行編〈上〉
とかく抽象的な議論に終始し具体的イメージが沸きにくい手続法である民事執行法を,東京地裁民事執行センターの裁判官と書記官が,書式や記載例等を豊富に引用しながら,手続の流れに従って記述した実務書。近時の法改正を盛り込んで最新の内容にしたもので,まさに民事執行実務書の決定版である。不動産編2冊と債権編2冊から構成されるこのシリーズを持っていれば,不動産執行及び債権執行の実務で発生する問題はほぼクリアーできる。民事執行に携わる裁判官,書記官,弁護士,そして金融実務家に胸を張ってお勧めできる内容になっている。
ホスピタリティ―CS向上をめざす巣鴨信用金庫の挑戦
信用金庫をはじめとしたコミュニティバンクと地方銀行の同質化が議論される中、コミュニティバンクにおける差別化戦略の一つになり得るのではないか。
「『喜ばれることに喜びを』をモットーに、あくまでもお客の視点から考える。」、「お客に喜ばれることを第一に考える、そのために非効率になることも厭わない。その一方で、お客に見えない部分は、効率化を徹底する。」
巣鴨信用金庫を「金融サービス業」と位置づけ、ホスピタリティを理念とした同金庫の取り組みは、他のコミュニティバンクにとっても参考になることが多いのではないか。
コミュニティバンクの強みは、“Face To Face”という信用金庫のキャッチフレーズにもあるように、「顧客接点の多さ」にあり、これをどのように活かしていくかが差別化につながると思う。同金庫の取り組みは、”株式会社銀行“には、真似のできないコミュニティバンクならではの戦略なのではないか。
また、注目すべきは、同金庫が「喜ばれることに喜びを」という視点から活動してきたことが、実は金融業界におけるマーケティングの先駆者になっていたこと。顧客満足(CS)を標榜する金融機関は多いものの、目先の収益や既成概念、保守的な企業文化に縛られ、本当の意味で「顧客ありき」の経営をしているとは言い難い。
ただ、いつも思ってしまうことだが、こうした改革や変革を行うのは、いつも外部の視点を持った経営者(同金庫の田村理事長は、ホテル勤務・レストラン経営の経歴を持つ異業種からの経営者)であり、生え抜きの経営者では無理かなと思ってしまう。
民事執行の実務 不動産執行編〈下〉
とかく抽象的な議論に終始し具体的イメージが沸きにくい手続法である民事執行法を,東京地裁民事執行センターの裁判官と書記官が,書式や記載例等を豊富に引用しながら,手続の流れに従って記述した実務書。近時の法改正を盛り込んで最新の内容にしたもので,まさに民事執行実務書の決定版である。不動産編2冊と債権編2冊から構成されるこのシリーズを持っていれば,不動産執行及び債権執行の実務で発生する問題はほぼクリアーできる。民事執行に携わる裁判官,書記官,弁護士,そして金融実務家に胸を張ってお勧めできる内容になっている。