平等院鳳凰堂―よみがえる平安の色彩美
平等院鳳凰堂建立当時の彩色をCGで再現…実に見応えがある。
実際我々が現存する往時の建築物を一見した所で、今では
枯れてしまったその色合いから時間経過の長大さを感じる
のが関の山なのだが、その感覚をこの一冊は楽々と吹き飛ばしてしまう。
この色彩こそは、往時の人々が望んだ浄土の姿なのだろう。
平等院鳳凰堂―現世と浄土のあいだ
最初に、平等院鳳凰堂についての五つの謎が提示され
ます。この謎解きが結構面白くて読む者を飽きさせません。
(著者の意図するところは、2/16『週間読書人』に記述され
ています。)もっとも、最後の九品阿弥陀仏をめぐる論述ま
で来ると、さすがに疲れ果てるのも事実ではあるのですが・
・・。
エピローグに記された「浄土教中心史観(家永三郎、井
上光貞)をこえて」という果敢なメッセージや建築史や美
術史を全体史から捉え直すトータルな視点の強調には、
深く共感できるところがありました。
本書の元の論文は、専門書や専門誌に収録されていた
もので、めったに読むことはできなかったはずです。レベ
ルの高い研究が一般向けに編述されて、このような形で
刊行されたことは大変良かったと思います。