機動戦士ガンダム短編集 新MS戦記 (電撃コミックス)
雑誌『B−CLUB』や『GUNDAM WEAPON』で連載された近藤和久氏の短編をまとめた物です。概ね『Z』から『逆襲のシャア』あたりの時代を舞台にした5話が収録されています。
近藤作品ではお馴染のフレデリック・F・ブラウン大尉がネオジオンの隕石落とし作戦に使う核の奪取を狙う話があったりして、ストーリーも中々興味深いですが、基本的には『近藤アレンジ』を施されたMSの描写を楽しむ作品といえます。
表紙になっているギラ・ドーガやジェガン、ガンキャノン、ギャン等も氏独特のディテール表現により見事に『近藤化』しており、他にもハンマ・ハンマに似た外見の『ワルキューレ』、ニューガンダムが地上戦艦と合体したような重武装大型MS(MA?)の『Gコマンダー』など、オリジナルMSも登場します。戦闘シーンでは『BAGGOOM!』『POW!』『CLICK!』といったお馴染の源文風擬音(?)も全開です。画風自体も小林源文氏の影響を少なからず受けているので『黒騎士物語』も好きだけど『ガンダム』も見る、という方なら楽しめると思います。
なお、5話のうち『南インド洋波高し』については、キャラクター設定が押井守氏になっています。出てくる連中は『西武新宿戦線異状なし(近藤版)』風で、擬音もこの話だけ『バサリンコ』とか『ドドーント』とかになっていて笑えました。
機動戦士ガンダム バニシングマシン (4) (角川コミックス・エース 17-7)
かつてその独特のディティールや独自のオリジナルMSを生み出し、80年代のガンプラ世代に衝撃を与えた近藤 和久氏による一年戦争時代のいわゆる「マイナーな存在」のメカに焦点をあてた作品で、この巻では前の巻からの続話(この巻で完結)になっていますが、この巻だけでも十分楽しめる構成になっています。持ち味でもある独特の解釈を加えたMSやメカの描写には好き嫌いは分かれるかもしれませんが、「主人公MSだけがガンダムじゃない」「アニメで語られない地域での戦争はどんなだっただろう?」と思われる方には強くお薦めできます。この巻でも正式には実戦参加が語られていないあるMSが縦横無尽に活躍します。いわゆる第二次大戦的な雰囲気を強く残す戦術や戦闘シーンは、最近のガンダム作品とはまた趣を変える形で非常に見応えがあり、そのまま映像化しても十分な完成度です。近藤作品ファン、MSVファンはもちろん、seedや00からの新世代のガンダムファンにも是非ご一読いただきたいです。
機動戦士ガンダム 新ジオンの再興 (角川コミックス・エース 17-8)
内容としては前作「ジオンの再興」では描かれなかった戦場での戦闘(宇宙とか)や、世界観のベースとなった「逆襲のシャア」での疑問(なぜ5thルナは簡単に落とせたのか、新型MS開発にアナハイムの援助を受けられたのはなぜなのか)に対して作者ならではの切り口で答える話が収録されています。もちろんこの本単独でも楽しめますが、前作「ジオンの再興」とセットで読むことで面白さが倍増することは間違いありません。近藤氏オリジナルメカも最新リファイン版として作中で活躍していますので近藤氏ファンはもちろん、近藤氏自身も力説する「MSを現実の兵器として捉えた」運用の仕方は、若年のガンダムファンにも興味を持ってもらえるのではと思います(特にZやZZ)。
機動戦士ガンダム0079外伝 MS戦記 (電撃コミックス)
私が、本作品を読んだのは、もう20年以上前の中学生時代。当時はB-CLUB別冊でなかったか?
兵器としてのモビルスーツの細かいモールドや、戦略的背景を描いた大戦闘描画に、それまで、ヒーロー活劇要素の高いアニメ版しか知らなかった自分には、戦争漫画としてのガンダムの新境地を見た思いで、以来、すっかり氏のとりこになり、今も作品が出るたびに買い続けています。
氏の描画は、人物描写がちょっととか言う方もいると聞きますが、本来ミリタリー作家なので、ガンダムを描くには人間を描くのも仕方ないという部分もあると、解釈しています。
いずれにしても、後に続くガンダムの世界観や公式デザイナーにも多大な影響を及ぼした功労を賞賛すべき人物の一人であり、本作品はその金字塔と言っていいと思います。
欲を言えば・・・、氏の作品はほとんど「非公式」扱いですが、全編通じての主人公と言える「フレデリック・ブラウン」や、オリジナルMA「ゲー・ドライ」、wikipediaでも相手にされていない「陸戦用"巨大"ZZ(可変可能!)」などなど、最近のガンダムゲームやスパロボなどで取り上げてくれたらいいのにな、活躍する勇士を見てみたいな、と思う今日この頃です。