学校から言論の自由がなくなる―ある都立高校長の「反乱」 (岩波ブックレット)
現役の東京都立高校の校長先生が、石原慎太郎下の東京都教育委員会の集合知弾圧/大声での脅迫に、静かな表現で異議を申し立てています。当然、不法な嫌がらせや暴力が振ってかかるでしょうから、彼やその支援者(その高校の多くの生徒/保護者など)の勇気には、最大の賛辞をお送りします。もちろん、岩波書店にも!
薄いブックレットですが、小生に印象に残った点は以下のとおり。
・東京都教育委員の米長邦雄氏(将棋指し)は、2004年の園遊会で天皇に「学校で国旗を掲げ、国家を斉唱させることが私の仕事でございます」と言ったところ、天皇は「強制でないことが望ましいですね」と答えた。
・06年9月、東京地裁は東京都教育委員会の「国歌斉唱の際、教職員は国旗に向かって起立しなければならない」等とした「10.23通達」を「思想・良心の自由を保証した憲法に違反する」という判決を下し、「教職員は、国旗に向かって起立し、国歌斉唱する義務はない」とした。
・制度上日本は選挙で首長や議員を選ぶ。教育の現場に自由や活気を許さないのは都民/国民の落ち度。
戦前も選挙制はあった訳ですが、戦後は国民主権となってます。もちろん、市民革命を1度も成功させていない、ムラ社会/大勢順応主義の「私」社会:日本の風土が作った制度ではないので、本音と建前がかけ離れています。ただし、変化が激しく、創意工夫や対話で新しいソリューションを生み出していくことが正統と思われる現代において、教育も当局に都合の良い奴隷を生み出すのが主目的のままでは、日本の風土を支配する神様以外は誰も幸せになれない社会が続いてしまいます。
これは文科省や教育委員会の責任ではなく、国民の責任です。今の日本の普通の学校に子供達を通わせて、しかも改善を考えていないサルのような親達に、“Yes, We Can!"という人間らしいマインドを理解して貰うにはどうしたらいいのでしょうか?
アイ’ムホーム (下) (Big comics special)
これまでの作者のいろいろな作品を読んで、作者は、登場人物のかき方にくせがある人だなという印象がありました。作者にとって、好ましく思える人物像、好ましく思えない人物像があり、登場人物のかき方にそれがはっきり反映されていて、作者の思想が伝わってきました。
この作品を読むときにも、それは、頭にあったのですが、
最後は、少しいい意味で期待を裏切られたような「ほっ」とした気分に
わたしはなりました。
お金の思い出 (新潮文庫)
とても読みやすい自伝エッセイでした。
著者のことは、『ブラック・ジャック創作秘話』という漫画作品の中で知りました。
締め切り追われる編集者が素手で壁に穴を開けたというエピソードが出てきます。当時、手塚プロにいた著者がそのシーンを目撃したというのですね。
女性で、手塚プロにいたというのに興味を惹かれました。
この本は、著者が14歳の頃父親の会社が倒産し、夜逃げのようにして家を移ったことから始まります。
そこから、漫画家になりたいという夢を叶えるまでが綴られていくのですが、ユニークなのは話題が”お金”だということです。
手塚先生の漫画に傾倒し、憧れの手塚プロに入社し、雑誌の懸賞で佳作となり自作を掲載するようになるまでが前半で、後半は手塚プロを離れてからの話になります。
この間、どういう働きぶりで、どれくらいの給料をもらって、どういう暮らしぶりであったか、など包み隠さずお書きになっています。
貧乏であったが為に、我慢を余儀なくされたり、漫画を描くために引越しをしたのに意欲が湧かなかったり、多分多くの人が同じような思いをされたことがあるのではないでしょうか。
一番最初にこの本を手塚治虫先生に見せたかった、という言葉で締めくくられています。
お金には苦労されたようですが、素晴らしい仲間、素晴らしい時間を持つことができた方だと思います。
読者を元気付けてくれる本だと思います。
アイ’ムホーム (上) (Big comics special)
「アイ’ム ホーム」「俺になりたい男」「セカンド ベスト」は、
最近の作者の家族3部作だとわたしは思っています。その中でも、
この作品が1番面白いと、はっきり感じています。
次々に「ただいま」と言える場所が出てくる展開、そして、主人公の
過去がだんだんはっきりとしてくる様子、新しい妻と子どもと一緒にいる意義とは?息をつかず、読んでしまいました。
最後に考えることは、やはり、自分が「ただいま」と言える場所は
どこだろうかということです。
赤ちゃんが来た (朝日文庫)
マンガ家石坂啓による妊娠、出産、育児のエッセー。教科書どおりの出産や、育児書どおりの育児はしておらず、そのことを隠すこともなく、ホンネが書かれている。
ちょっと気の強い普通の妊婦やお母さんの体験記という感じで、楽しみながら読むことができる。