プロコフィエフ&ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
ショスタコーヴィチのコンチェルトは好きな曲なので
色んな演奏家のを聞きまくっていますが…
Vengerovの演奏は(ある意味意図的にやっているのかもしれませんが)
勢い余って弓がかすれる、アタックが雑、といった細かい処理が気になって
あまり音楽に没頭できませんでした。
加えて曲よりも、彼自身の個性が全面に出てしまっているような感じがします。
もう普通に弾くことがつまらい、という頃の録音なのでしょうか。
「気持ち」の強いヴァイオリニストなだけに、
そのときの状態によって、合う曲、合わない曲があるのだと思います。
今更ながら、彼は超一流のヴァイオリニストですから、
一介のファンが技術面や音楽性でどうこう、というつもりは全くありませんが
今回は、ロストロポーヴィッチが孫のようにかわいがっている「Maxim」を
自由に泳がせすぎたかな〜という感があります。
なお、ゆっくりした楽章(1.3楽章)は
天性の歌心を感じます。素直に美しいし、ヴァイオリンをここまで歌わせることが
できる人って他にいないのでは、とも思います。
ただ…神妙な曲想のときは果てしなく重く、
勢いある早い部分は刃物を連想させるような切れ味と正確さで
弾きこなす兄弟子レーピンの演奏が個人的にはいちばん好きです。
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調Op.47/ファリャ:交響的印象「スペインの庭の夜」 他 [DVD]
このDVDはヴェンゲーロフ/バレンボイム/シカゴ交響楽団 他の演奏によるものです。
何と言ってもおすすめはシベリウス/ヴァイオリン協奏曲とアンコール曲でのバッハとイザイです。
ヴァイオリンからの直接音、シカゴシンフォニーホールの反響音のバランスがとても気持ちいいし、ヴェンゲーロフの余裕を持った技術力の演奏は聴いていてとても好感が持てます。
ヴェンゲーロフの渾身の演奏、優秀録音を是非聴いてみて下さい。
シベリウスのヴァイオリン協奏曲の決定版がない中、この演奏はなかなかの完成度だと思いました。
ファリャの曲は指揮がプラシド・ドミンゴでピアノはバレンボイムです。誰が指揮してもシカゴ響は万全だけど・・・だからこの演奏に関してはノーコメントにしておきますね。
チャイコフスキー&グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲
20歳を少し越えたぐらいの、若々しいヴェンゲーロフのヴァイオリンが爽快感バツグンで気持ち良い!「百年に一人の才能」と評価されるぐらいだから、ヴァイオリンの技巧は非の打ち所がないぐらいに完璧! あまりに易々と難易度の高い技巧をこなすために、表現力が外面的で派手なヴァイオリン演奏になりがちだと評価されることも多かったが、ここまで見事なヴァイオリン演奏を聴かされると、そんな評価は些細なことに思えてしまう。チャイコフスキーでは、ヴェンゲーロフの躍動感に満ちた技巧と明るい冴えた表現力が聴ける。彼の若々しい推進力に満ちたヴァイオリン演奏はパワフルで、魅力的だ!グラズノフでは、彼のメランコリックな表現も聴ける。期待の若手ヴァイオリニストだったが、2008年に肩を壊して演奏活動休止。期待の大器だっただけに、これから彼のヴァイオリンが聴けなくなるのは淋しかったが怪我なら仕方がないと諦めていたが、2011年にヴァイオリンの演奏活動を再開!今後はヴァイオリン演奏と指揮活動を続けていくらしい。ヴェンゲーロフの今後の演奏、録音活動に 期待したい!
メンデルスゾーン&ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲
ヴェンゲーロフの溌剌とした若さとみなぎるパワーが気持ち良いです。
ブルッフのコンチェルトは”考えに考えて”弾く曲ではないと思うので
彼特有の、激しいアタックをつけた情感たっぷりな演奏がハマっています。
特に1楽章が素晴らしい。
序奏から中盤の怒涛のオケパートを導くまでの引っ張り方が実に気持ち良い!
ブルッフもこういう風に弾いてもらいたかったのでは?と思うような名演奏です。
メンコンも1楽章が気に入っています。
冒頭の有名な主題について彼は自伝の中で「どれだけ美しく、心を込めて弾けるだろうか」
…と、いうようなことを言っていました。
その言葉を反映したような、超絶的な美しさとせつなさはらんだ演奏です。
彼の演奏はややもすると「やりすぎ」と評されがちですが、
今回の曲に関しては、彼の重いくらいの(笑)強〜い気持ちが芸術に美しく昇華された名盤だと思います。