Sumogrip
「スモウグリップ」というタイトル通り、ジャケットは力士の貴乃花と若乃花の兄弟が、がっぷり四つに組んだ写真(笑)で、日本人には笑ってしまう代物だが、欧米人は異文化的で神秘を感じるらしい…。1981年の「Mean Machine」を最後に事実上活動を停止したドイツのLUCIFER'S FRIENDが、何と13年振りにLUCIFER'S FRIEND IIとして再結成された。 シンガーはオリジナル・メンバーのJohn Lawton。URIAH HEEPの2代目シンガーとしても知られ、DEEP PURPLE~RAINBOWのリッチー・ブラックモアがシンガー起用を打電したこともある名シンガー。伸びのある美声で評価が高い人物だ。
~IIとしたのは、1981年までとは別の活動であることを示すため、との事。 ところが、これが今までのどのアルバムよりも優れた作品になってしまうのだから不思議なものだ。 「歌える」キャッチーなメロディーを軸に、悲壮感のある疾走曲から、明るいバラードまで、本当に様々なタイプの名曲がずらりと並ぶ。
ジャケットにニッポンの「相撲」(貴乃花・若乃花)を使い、Get In(入場)、Banzai(万歳) などというインストが入る企画はこの際どうでもいい。 とにかく、恐ろしいほど曲が揃っている。Track 5の別ヴァージョンのボーナス曲まで、全く捨て曲がないという信じられないアルバムで、美しいハードなロックが好きなら、迷わず聴いてみるといい。
LUCIFER'S FRIEND自体が日本では無名だったため、日本盤は見送られたが、そのクオリティの高さから、輸入盤店への入荷が徐々に増え始め、最終的にはかなりの枚数が売れたようである。日本での配給も多いCastle Communications(現Castle Records)からのリリースだったにも関わらず、最後までどこの国内レコード会社も手を挙げなかったのは残念でならない。
Banquet
ルシファーズ・フレンドは、聴き手の想像力を遥かに超えたハードロックバンドだ。もともとルシファーズは、おそらくハードロックをやるには、音楽的な素養と技量がありすぎるメンバーたちによって構成されており、楽曲に多種多様な劇的要素(あまり必然性がない)や非予定調和性を詰め込みすぎる傾向があった。これは彼らの最大の長所であると同時に、「何がやりたいのか得体が知れない」といった不信感を抱かれる短所のひとつでもあった。本作は、4作目にして、彼らの魅力を最大限に生かした、まさにプログレッシブなハードロックの最高傑作である。
Where the Groupies Killed
非常にテクニカルで格調高い(雑多で趣味っぽいだけか?)、ハードロックバンドであるが、おそらく一般のハードロックファンには、ついて行きにくいサウンドだと思う。特にキーボード全般と、管弦楽器のアレンジまでこなす、ペーター・ヘクトの大仰な逸脱プレイはこのバンドの要である。後半は特に難解な構成(ジャズ、変拍子はもちろん、現代音楽やチェンバーへの接近も)になっており、ハードロックを楽しみたいというよりも、異常な音楽への薀蓄を垂れたい、プログレ・ファンの方におすすめします。
ミーン・マシーン
ドイツ出身の通好みの実力派バンド。本作は隠れ名盤として知られる。オリジナルの発売は1981年。ここではプログレやポップは封印し、何のてらいもない王道HM/HRを体現している。Deep Purpleら伝統的ブリティッシュハードを、より現代的かつメタリックにしたようなスタイル。
巧みにキーボードを絡めた絶妙なアンサンブルを聴かせる。ボーカルはUriah Heepから出戻った、シーントップクラスの実力者ジョン・ロートン。カッコいい声質含め、ハードロックを歌うために生まれてきたようなボーカリストです。方向性はあくまで楽曲重視。キャッチーでフックのある、コンパクトな楽曲が並びます。
冒頭と締めくくりの1.One Way Street to Heartbreakと10.Bye Bye Sadieはロックン・ロール。1はヘヴィだ。10はヌケが良くカラっとしてるが、これも欧州のバンドらしく能天気にはならない。ドライヴ感抜群の2.Hey Driver、ミディアムテンポの3.Fire and Rainとも、よく練られた佳曲。
4.Mean Machineはギターの見せ場のインスト。これと力強いリフで引っ張る次曲の5.Cool Hand Killerはワンセットで、見事な組曲となっている。アナログのB面部分も失速するどころか、硬質でドラマティックな曲が続き、ますますエネルギッシュに熱を帯びていくのが素晴らしい。
同郷の一大成功者ScorpionsのBlack Outが1982年だから、このバンドがいかに先進的だったかは推して測るべし。中身と売り上げは比例しないのは世の常だが、こんな名盤を最後に一旦解散に追い込まれるなんて、本当にやり切れない。