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ヘタコイ 7 (ヤングジャンプコミックス)
前巻から抱いていた自分の心情が次第に濃くなっていく主人公。今付き合っている
島津さんのいい彼氏にならなければと思っているのに、ヒロインのことが忘れられ
ない。
そんなある日のこと、主人公の様子がおかしいことに気づいた先輩の矢治さんが、
こっそりとご隠居さまのあとをついていくと……。
ご隠居様と島津さんが付き合っていることを知った矢治さんは――。
ネタバレになってしまいますので、今回はあまり詳しいあらすじを書きませんでし
た。
とはいえ、他のレビュアーの方も語られているように、来るべき時が来たという
具合ですので、読者の方々はどのような展開になったのか容易に想像がつくと
思われます。
個人的に興味深かった点としては、先輩キャラである矢治さんの立ち回りですね。
(今では主人公と同学年なわけですが)
ナンパなキャラクターといったふうに描かれていたので、彼の振る舞いは意外な
ものでした。
主人公のことを慮っての行為。いい男ですね。
それと、巻末についている作者の中野氏のあとがき。
それにはまったく気づいていなかった私なのですが、仮にそうしていたとしたら――
違う未来があったのかもしれないですね。
おそらく次巻からは、主人公とヒロインの恋物語が再開となるでしょう。
はたしてどうなっていくのでしょうね。
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ヘタコイ 10 (ヤングジャンプコミックス)
うすげたいさく月イチ連載で4年半越しに及んだ「ヘタコイ」が、ついに完結しました。
思えば長かった。
1巻でかなり過激な出会いが仇となって同極どうしの磁石のようにすれ違い、
2巻で周囲の圧力と互いの人柄にふれて少しづつ接近し、
3巻は温泉ホテルでのバイトで一気に近寄った(ご隠居こと)静と女先輩・流香の仲。
互いのもと片恋相手が恋敵として現われ、ふたりの「恋の糸」をもつれさせて切り裂く4巻から6巻では
さすがに「中野先生、アンタは鬼か!」と思わずにいられなかった。 (おおかたの読者はこの展開で一度は離れたのでは)
流香の(静への)一途さと静の不甲斐なさが幸いして7巻末でこの修羅場に終止符が打たれ、
「友達の関係」として辛うじてふたりの繋がりが保たれる中、流香が静かなアプローチをかける8巻。
幼なじみの琴乃と彼女の同級生・五十嵐の片恋の行方と、流香の就活と静の学祭活動を通じて再び距離が近付いた9巻。
そして今回。
温泉ツアーでお互いがふたたび告白しようとするものの流香が山中で遭難し、
救出に向かうものの風邪のまま全身雨に濡れて意識不明に陥った静…… (あとは書けないので直接読みましょう)
最後の最後まで波乱だらけだったけど、上記タイトルにやっとたどり着きました。
(個人的にはラスト3話くらい静がイニシアチブをとって、ヘタレから脱皮する展開でもよかったのでは)
さらには、心だけでなく身体もひとつに結ばれた、恍惚の完結編「イロコイ」。
流香、よかったじゃん(いろいろあったけど)。 今度こそお幸せに。
「余談」
1:巻末あとがきには「ヤンジャン」誌での性描写規制が厳しくなった事が述べられていますが、
過剰な『東京都青少年健全育成条例』が少なからず影を落としているのではないでしょうか。
(そのくせチンピラ・ヤクザが主役のバイオレンスものやグロテスク描写のSFものはノーチェック同然で、明らかに不公正だ!)
コミックから何が善で何が悪いのかを自力で学びとる機会を奪う条例・法律は早急に見直されることを望みます。
2:中野先生の描くヒロインの絵柄は美しいので、「フラワー」のようなメイクラブ・テキストのイラストを担当されると高く評価される筈です。