スティル・クレイジー [DVD]
歳をとってこういう作品が心に響くようになってしまった。
結果的に当たりなんだが、本作に★5つをつけたらいけないような気がして、一つマイナスとした。
話の筋はバンド再結成に向けて紆余曲折。
どれもこれもどこかで見たような話である。
だが、ワンパターンは王道なのである。
いわば、『水戸黄門』のラストに印籠が出てきて、悪人がひれ伏すのと同じ。
観客はそういうのをこそ欲している。
途中途中にギャグが挟まれているが、そのギャグがことごとく滑っていて、すっごく寒い。
最初、コメディだと思っていたため、こんな寒い調子が続くんじゃ糞だと思った。
でも、最後まで見て気がつくのである、これは狙って外しているギャグだと。
登場人物は、みな道を外れたおっさんたちだ。
若いころに酒と薬と女に溺れ、社会のレールから勝手に外れていった連中である。
仲間内だけでしか受けないような話をして、仲間内だけで大笑いする。
それを観客は外から見ていていたたまれなくなってくる。
そして、「歳をとるというのは悲しいことだ」と感じるのである。
しかし、人は誰でも歳をとる。歳をとったとき、はじめて「老いというのも悪くない」と、無理矢理にでも思うようになる。
話が先に進むごとに、やっと「これはコメディではなく、おっさんたちのレクイエムなんだ」と気がつく。
過去の栄光をもう一度、だが、そうやすやすと「もう一度」はやってこない。
七転八倒の末にやっと光らしきものが見えてくる。その程度だ。
正直に言って、ビル・ナイ以外は興味もなかったが、時間がたつごとに作品に引き込まれた。
劇中、彼らが喝采を浴びるとき、見ている自分自身も嬉しくなってくる。
それがどこか悲しい。
現代アート、超入門! (集英社新書 484F)
とても読みやすい入門書です。
「分からない」作品の観方や考え方を「分かり易い」説明で示し、
「分からなくても」作品鑑賞ができると思うようになります。
全体を通して「分からなくても構わない、自分なりの鑑賞をしよう」と
「現代アート」の世界へいざなう著者の思いが伝わってきます。
また、それぞれの章の後半が簡単な現代アート史のようになっていて、
どの美術作品にも時代的背景があることに気付きます。
「現代美術」とせず、「現代アート」とカタカナで記述されている
ところには著者の何か意味するところがあるのかなとふと思いました。
佐々木健一著「美学への招待」の内容とも通じるところがありそうです。
「芸術」「美術」「藝術」「アート」「art」のそれぞれの定義や、
言葉の持つ印象や連想される内容を考えるのも面白いかもしれません。
ベスト・バロック100
ベスト100シリーズは、ジャズにしても、クラッシックにしても、楽曲間の雰囲気の違いが大きく、CDチェンジャーでランダムに聞いていると雰囲気・気分ががたがたしてしまう。でも、このバロックは比較的楽曲間の雰囲気の違いが小さくランダムでかけていてもずーっと気分よく時間が流れる。それでいて、楽器の組み合わせの違いなどから微妙な雰囲気の揺れもあってバックグラウンドミュージックとして最適と思えた。
ただ(やむを得ないことだが)全部収録しきれずに途中で終わってしまっている曲もある。その分だけ一つ星を減らした。でも、フェードアウトにも気を配っているせいか、あまり唐突な終わり方を感じさせず、無理がない。
バッハ:ブランデンブルグ協奏曲第2番&第5番
ブランデンブルグ協奏曲5番でレヴァインのチェンバロがなかなか格好良いです。トゥッティでもチェンバロがはっきり聞こえるので録音のバランスもなかなか良いです。ブランデンブルグ協奏曲2番は貴重ですね。シカゴ交響楽団の主席トランペットを53年間務めた神様アドルフハーセスのソロが聴けます。
スティル・クレイジー [DVD]
ライブの前に「お前はカッコいい」と自己暗示を
かけるヴォーカリストのレイ(ビル・ナイ)が好き。
アルコール依存症の会に行くつもりが拒食症の
会に行ってしまったり、年をとると若い頃には
考えられないボケをしてしまう場面も良かった。
そんなレイが、「若い頃に、栄光を見ちまった
オレの人生は悲劇だ」と絶望して言うんですよ。
そしたら、バンドのマネージャーのカレンが、
「悲劇は、飢餓や熱帯雨林の伐採よ。
それに、一生、栄光とは無縁の人もいるのよ」と。
人生への諦めを噛みしめながら、まだ心の中で
青春を諦めていないオジサンたちが愛おしい。
長いこと確執のあった2人が「炎は消えず」を
一緒に歌う場面は、感動的でグッときました!