カプリッチオ
池田昭子はN響のオーボエ奏者。1月の定期でも巨匠ブロムシュテットのタクトでシベリウスの「トゥオネラの白鳥」のイングリッシュホルンのソロで見事な演奏を聞かせてくれた。ポジションはセカンドなので目立ちにくいが図抜けた実力の持ち主。その池田がソロとしてCDデビューした。
オーボエのソロアルバムといえば、バロックが中心になりがちだが、これは正統ロマン派のオーボエ。バロックオーボエは装飾の美しい華麗な曲想と明朗で闊達な音色が強調されがち。対してこちらは、情感豊かな大人のオーボエを堪能できる。池田の音色は、艶やかで伸びがあり、陰影に富み表情が豊かだ。オーボエは二枚リードで、これを支えコントロールする唇のフォームと息圧と流速が高いことからくるブレスコントロールが難しい楽器だが、この技術が高いからこそ出せる音色の豊かさと音楽性の高さだと思う。シューマンの「3つのロマンス」はこのアルバムでもそうした池田の高い資質が凝縮された名演だと思う。
録音は、ワンポイント、ハードディスクからのダイレクトカッティングで極めて質が高い。キーやブレスの自然ノイズはほどよく抑えられ、ホールトーンに頼らずに適切な空気感があって心地よい。ピアノとのバランスもとてもよい。
池田の美貌や「のだめ」出演などに踊らされず、選曲、演奏、録音とすべてにおいて、本格派、正統派に仕上がった大人のデビュー盤。とてもうれしい。
アヴェ・マリア~オーボエ作品集~
今回のアルバムのコンセプトを一言でいうと「歌」と「祈り」ではないでしょうか?
メロディーに歌を感じるものばかりです。オーボエ&イングリッシュホルン、歌っていましたよ!晩秋にピッタリの雰囲気です。
特に、テンポと流れに注目。テンポはゆっくりのものが多いのですが、池田さんのテンポは、ゆっくり過ぎずです。なんかとってもサバサバして、しかも心地よいところがポイント。あと、流れです。アルバム全体が、一つの曲、作品みたいです。一つ一つの曲は短いですが、それが流れになっています。その辺のところがすばらしいです。なんか、淡々と進んでいきますが、その一方で、花の歌なんかは大分テンポが揺れたりして情緒たっぷりです。そんな流れに気をつけて聴いてみるといいかと。
アルビノーニ&マルチェッロ:オーボエ協奏曲
池田昭子さん(通称池昭(いけしょう)さん)のオーボエの音には、他のオーボエ奏者にはない、丸みと柔らかさがあります。
それは発音(音を出す瞬間)にも、音色にも全く鋭角的なところがない、ということが関係しているように思います。
オーボエは、音量は小さいけれどもその独特な音色は全オーケストラが鳴っていても聞こえるほど、良く通ります。
しかし、それは一つ間違えると、オーボエの音色は、鋭角的に、つまり、耳に刺激的な音色になる危険を秘めている、ということです。
池昭さんのオーボエには、全く鋭角的な要素がない。私は「池昭さんトーン」と言いたいです。
アルビノーニ ニ短調作品9-2 やマルチェルロは、随分色々なオーボエ奏者の演奏を聴きましたが、
冷静に聴き直して、やはり今、池田昭子さんの演奏が最も美しいと思います。
アルビノーニ、第二楽章のソロ冒頭。ロングトーンに僅かにヴィヴラートをかけて吹いておられますが、あの一音だけで身体がふにゃりと
とろけそうな甘美な美しさ。文句の付けようがありません。
マルチェルロは、第一楽章の滑らかな装飾音型の心地良さ。
「ヴェニスの愛」で有名になった、第二楽章の殆ど陶酔するほどの美しさ。比類がありません。
その他、収録されている、全てがお薦めです。名曲の名人による、名演。それ以外に形容の仕方を知りません。
蛇足ながら、N響は、これほどのオーボエ奏者が2番をしっかり支えている。誠に贅沢なオーケストラだと言えましょう。