レアル・マドリー―ディ・ステファノからベッカムまで
フィル・ボールに出会ったのは、「バルサとレアル」だった。
英国人ながらスペインに住む彼の、スペインサッカーに対する造詣の深さに感服させられ、一気にファンになってしまった。
その彼が、今回は「レアル・マドリー」に主題を絞って書くというから、バルセロニスタを自任する僕としては、彼がどのような表現をするのかとても気になったから、早速購入して読んでみた。
感想は、陳腐な表現になるけれど非常に奥深いものだった。
前作とは違い、主題が明確だからレアル一本槍の内容なのかと思いきや、やはりそこはフィル・ボール、リーガの歴史を巧みに紹介しながら、レアルの歩みを克明に導き出す。実はクラブ創設から20年程度はそれほど勝てなかった事や、バルセロナとの対立関係が実は僕らが知っているような単純なことではなく、多様な側面を持っている事など、この本で改めて知った情報も多数あった。
レアルファンだけでなく、リーガエスパニョーラ、ひいてはスペインという国家に興味のある人にも十分楽しめる本になっていると思う。フィルボールの書く文章はそれほど難解ではないし、訳者の実力も十分。個人的には、十分な読書量を誇る読者でも十分楽しめる内容になっていると思う。
ただ一つ残念なのは。フィル・ボールがどんどんレアル・マドリーに引き込まれ、あれだけ冷静な文章を書いていた彼が最後には完全な「マドリスタ」になってしまった事。バルセロニスタの僕にとっては、ちょっと悲しかった。