地のはてから(上) (100周年書き下ろし)
乃南さんの本は、大好きでいつもあっと言う間に
読んでしまうのですが、今やっと下巻を読みはじめる
ぐらい1ページ1ページに心が痛みを増しました。
とわと同じように場所は東京でしたが、祖母も
奉公に出ていました。
祖母は長女で下の4人の子守りの後の
奉公で、孫の私に一言、母親がそうする
しかなかったから仕方なかった、でも
辛かった、と私に話してくれて、
まさにこの作品と祖母がリンクして、
祖母はこんな気持ちでいたのかと
想像したら、辛かったです。
ただでさえ、女性が低い立場にある
時代に男性に振り回される女性や息苦しい
生き方しかない女性達の苦痛と現実がせまって
くる作品です。
まだ少女だった祖母は、何を想い、生きてきた
のだろうかと思いまた1ページ読もうと思います。
風紋〈上〉 (双葉文庫)
主人公は高校生の女の子。
彼女は毎日を楽しく生きていた。そしてこれからも生きていくはず…
だったのに。
突然の母の死。そしてその死が病気や事故ではなく、殺人だった。
幼い女子高生の身に降りかかった母の死という現実。
母のいない生活。バランスを欠く家族。被害者であるにも関わらず冷たい社会。
マスコミの存在。彼女の中にうずまく恐怖と、周囲からのプレッシャーの中、
彼女はどのように母の死という現実を受け止めるのか。
ミステリーという形態をとりながらも、その本質は母の死に直面する幼い娘の
心情の推移を描く作品である。
いつか陽のあたる場所で (新潮文庫)
芭子と綾香には前科があり、二人は刑務所で知り合いました。
二人とも贅沢もせず、まじめにひっそりと生きていて、とても罪を犯した人のようには思えない。
だから読者は二人を応援するでしょう。
家族は連絡もよこさないし、なんてかわいそうな二人とすら思ってしまう。
だが、家族とそんな関係になってしまったのには、
どんなに二人が今をしっかり生きていたとしてもぬぐえない理由があるから。
事件を犯し、刑務所に入るということは被害者と加害者だけの問題ではない。
家族を含め、周囲の人々の人生まで狂わせてしまう。
もし犯罪を犯してしまう瞬間に、一瞬でも家族の顔が浮かんだら思いとどまる人はずいぶんといると思うんだけどなぁ。
刑期を終えたからといって、犯した罪がなかったことになるわけではない。
塀の中でどう過ごすかより、刑期を終えて外の生活に戻ってからどう生きていくのか・・・。
本当の意味での償いはそこからの生き方にあるのだ。
二人のこれからを応援したい気持ちになりました。
凍える牙 (新潮文庫)
主人公の女性刑事と相方のおじさん刑事、おじさん刑事とその家族、
そして女性刑事とナゾの獣・・、といった、
いろいろな視点から見ることができる人間ドラマ、
みたいな感じでした。それと、家族とか信頼というような
事についてもしばし考えさせられました。最後は結構
涙出ました。
最後の恋―つまり、自分史上最高の恋。 (新潮文庫)
8人の女性作家の恋愛短編小説。
それぞれ内容は簡単なもので、ふらっと公園・喫茶店に入って読み切れるボリューム。
作家が、最後の恋から連想できた物語を、サクサクっと書き上げたと思われます。
というわけで薄味・後味サッパリの作品群です。
逆に心に響くというわけではありませんが(笑)
個人的にお気に入りなのは“春太の毎日”。とってもファンシー。
自分のペットが何考えてんだろー?
なんて想像を巡らせたことのある人にはお薦めです。
この物語では、ちょっとヤキモチ焼きな弟系のかわいい男の子が出てきます。
読み切ったあとには、ペットとじゃれ合いたくなる事この上なし。