中間管理職刑事 (バンブーコミックス)
OL進化論のキャラ 課長さんや田中さんを使ったスターシステム作品です。
秋月先生らしい基本ほんわか、そのくせ妙に納得させられる安定した内容で、さすが四コマの女王といったところです。
が、いつものA5版ではなくA5変形本で1ページに1作品(1つの四コマ漫画)というレイアウトはどうでしょう?
装丁・デザインに配慮してあっても余白は気になりますし、価格にも影響するのではないでしょうか・・・
秋月先生ではなく出版社の意向だと思われますが、このご時世受け入れ難く感じます。
おうちがいちばん ⑥ (バンブーコミックス)
OL進化論では世の中の眼に見えない法則を鋭く見つけ出すネタを
繰り出す秋月りすだが、おうちがいちばんではその鋭さはだいぶ
緩和されてほんわかファミリー4コマというのがおおまかな印象だった。
今巻も基本的にはその印象は変わらないが、今までも頻発していた
課長の姑ネタが洒落にならないレベルの確執だったと判明。
せいぜいイヤミを言われるくらいなのかと思っていたら、
アレルギーとわかっている(思い込んでいる)ものをわざわざ選んで
お中元で送られる程だったとは…。
他のネタがほのぼのだけに、このネタだけ読んだ時背筋が寒くなった。
また、主人公の妹がなんでもできるのに便利に使われるだけというネタも
「ああ・・・世の中こういうもんだよな・・・」と思わず寂寥に
囚われてしまった。
やはり、秋月りすは見た目のほのぼのの中に潜む鋭い刃が本質なのだと
再確認する1冊だった。
クリティカル進化(シンカー)論―「OL進化論」で学ぶ思考の技法
クリティカル・シンキングとは正しく考えることである。「批判的思考」と訳される。カントの「純粋理性批判」などの批判である。他を否定することではない。大辞泉によれば「批判」とは「物事に検討を加えて、判定・評価すること。」である。批判は明治期に作られた和製漢語だろう。元来否定の意味はなかった。しかし、欠点は目につき易い。批判の思考が問題点の指摘に向けられ、意味が変遷したのは人間の性癖の故と思う。
本書一冊で十分である。知識には情報と体得と二つがある。本を読んでも意味がないと言う人がいるが、間違いである。情報的知識は本から十分に得られる。水泳を始めた人がクロールで上手に泳げないという。小生は多少水泳に自信がある。掻いた手は「ズボンのポケットから手を抜くように」と教えて感謝された。本に書いてあったことをそのまま言っただけだが、的確な表現を学べるのも本の良さである。
体得的知識は本で習得できない。眼前の問題を考える実践の中で身に付けるしかない。セミナーに行っても意味はない。講師は我々の仕事を体験していないのだからいわば泳げない水泳コーチである。理想は先輩や上司から時々助言を受けることである。無理なら本を参考に自分で考え抜く。
小生がセミナーの講師なら次の三点だけを言おうと思う。
・ 良く見る。
ロジカル・シンキング云々という本を読んでいたら、統計資料を見て考えよという問題があった。技術者はまずその統計自体を疑う。二十代と回答しているが、本当に二十代か。学生時代の統計学の教授の講義は脱線ばかりであったが、教授の著書には「生年月日を書かせない場合、とくに女性はxを9以下の自然数としたとき、20+x歳を20歳、30+x歳を30歳と書く傾向にある」という意味のこと(正確な文言を失念)が書いてあった。実験も統計も人間が行なうことである。必ず抜けや間違いの可能性が伴う。データをよく見、話を十分に聞き、納得いくまで確認することである。それがクリティカル・シンキングである。
・ 決め付けない。
某米国資本企業の日本の工場。工程で不良が発生した。工程Aが疑われた。対策会議でその工程の担当技術者は「製品1は工程Aを通るが製品2は工程Bで処理する」と淀みなく答えた。問題が発生した製品2は工程Aを通らない。振り出しに戻ることになった。しかしである。後で調べると実はその逆であった。担当技術者は工場の幹部が出席した場で「知りません」とか「調べます」と答えにくかったのである。技術者が嘘を、少なくとも技術的問題にかんして言うとは考えられなかった。これが決め付け、思い込み、捉われである。自ら思考の範囲を狭めないのがクリティカル・シンキングである。
・ 安心しない。
工程でときどき不良が発生する。原因はAかもしれないと考える。Aの対策をする。不良が止む。そこで安心することが多い。一つの問題に考えられる原因は十から数十ある。一つ思い付いたからと言って安心して途中でやめず考え抜くことである。小生は工程の技術者としてこれを何度も経験した。Aの対策で問題が一時的に止まったのは単なる偶然であり、原因は全く別の所にあったのである。あらゆる可能性を考え抜くこと。これもクリティカル・シンキングである。
各説明に体験談を入れて20分ずつ。一時間あれば終わる。それでは商売にならないし、第一ありがたみがない。簡単なことを難しいように説明するのもセミナー講師の腕の見せ所である。その意味で小生はセミナー講師に向かない。
本書を読んだ大抵の技術者の感想は「技術者なら当たり前のことではないか」だろう。説明も冗長で少々まどろっこしいと感ずる向きもあるかもしれない。情報のうち九割は各自の常識の中にある。しかし気付かないでいた一割が値千金なのである。秋月りす氏の漫画も面白い。弱点の修復と漫画とで十分元は取れる。本書を購入したら手元に置き、各自が体験した失敗をノート代わりに赤文字で書き込もう。傍線やマーカーや書き込みのある本は元の価格の何十倍もの価値がある。
OL進化論(33) (ワイドKC)
20年以上も続いている「OL進化論」だが、カバー見返しで著者が語っているように、OLは死語になっているのかもしれない。でも、まあそれは、派出所という言葉が使われなくなっていることと同じように、それでもタイトルは変わらないということでいい。
ただ、そういうこととは別に、あらためて時間の流れを感じる一冊となっている。
まず、「35歳で独身で」が少なくなっていること。もう、35歳で独身というのは、めずらしい存在ではなくなってしまったのだろう。
それ以上に、登場人物の年収が低いことだ。年収300万円なくて結婚できなかったり、共稼ぎ前提だったりということが語られる。笑ってすませるわけにもいかない、現実が反映されてしまっている。ほんと、ちょっと顔をひきつらせながら楽しんだというのが、正直なところだ。
あらためて、33冊を読み返すと、バブル崩壊後の日本がどのように変わってきたのか、貴重な証言にもなっている。そのことをあらためて感じさせてくれる、その意味で、33巻を評価することにしたい。