エル・ブリの一日―アイデア、創作メソッド、創造性の秘密
エル・ブリの裏舞台がつぶさに見られる!しかし、重たい!でも、その分内容は充実している。なんといっても目次からおもしろい。目次の左ページは、付箋を貼ったみたいだ。ワインリスト、レストランの見取り図などの文字が見える。右のページには5分刻みで時刻が書いてあり、一日の予定表になっていて、エル・ブリの一日の流れが経営面から把握できる。本文はこの予定表にそって写真が並んでいる。たとえば書類に囲まれたフェランのオフィス。彼は1年の半分はレストランを閉めて、食材や調理法の研究開発に専念する。その結果を分類し、こうやって蓄積しているのだろう。実際の分類法や料理の準備表なども載っていて参考になる。
厨房の写真では、どんな食材や調理器具を、どのように使っているのかがよくわかる。注射器がある。水戸納豆やポン酢もある。ふつうのレシピ本では、こういうものを発見する楽しみがない。これもこの本のすごいところだ。そういえば、フェランは来日した際、懐石料理にいたく感動したとのこと。けっこう日本の食材や調理方法が好きらしい。ああ、食べてみたい! 皆さんもこの本でエル・ブリの味を想像してみてはいかが?
エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン [DVD]
45席、半年だけの営業に対して予約申込みは200万件とも言われたエルブリ。
(エル・ブジという表記もあるが、現地カタルーニャ語ではエル・ブリ)
バルセロナから160キロ離れた小さな街の、世界一予約がとれないと言われたレストランは、惜しまれながら2011年に閉店した。
30〜40数皿を5時間かけて食べるコースは、宇宙の料理と言っていい。国籍も大陸も超えたオリジナルな料理が続く。
(日本料理の影響は確かにあるが、日本人がそれを殊更強調するのは、彼らの料理の本質を捉えていないと思う)
世界中の料理、料理以外のありとあらゆるものからインスパイアされたフェラン・アドリアとそのチームの創作プロセスが、
この映像には正確に記録されている。
とはいえ、極端に演出と解説を省いているので(本編はインタビューもほとんどなく、厨房を延々と映している)、
彼らが何を話し、何を目指し、何を生み出そうとしているのか、簡単には理解できない。
視聴者が理解できるのは、数十名のスタッフが「新しいもの」を生み出す執念のもとに統率されているということだ。
美味しい料理は世界中にゴマンとある。それらを食べ歩いている人も大勢いる。
ならば彼らが見たことのない、地球上で全く新しい料理を出さなければいけないという使命感が、エル・ブリを動かしてきた。
新しいメニューが「定番」「名物」になったとたん、古くなる。
だとすればフェラン氏がエル・ブリを閉め研究に専念するという選択も、理にかなっている。
エル・ブジ 至極のレシピ集―世界を席巻するスペイン料理界の至宝 (世界最高のレストラン―スペイン編)
世界のシェフが注目しているというスペイン料理レストラン「エル・ブジ」。スペインの・カタルニア地方の北のはずれモンジョイ入り江に面したこの店で供される品々は、スペイン伝統料理をベースに料理人フェラン・アドリアの創意と工夫によって作り出された新しい味とのこと。その料理のレシピを写真つきで紹介した一冊です。
料理のつややかさ、色合い、匂いまでも写し撮った大判の写真はなかなか見事です。料理を紹介する本の中には写真がこぶりなために、今ひとつ「見えない」というストレスのたまる思いをさせられるものがありますが、この本の写真は実物大に近いと思われる十分なサイズがあって安心して見ていられます。紹介されているレシピに従って料理を作るつもりのない読者も、料理写真集として眺めていて飽きることはないと思います。ただしあくまでスペインの伝統料理そのものに触れている本ではなく、いわゆるヌーベル・クイジーンを紹介しているということを覚悟する必要はあります。
著者の渡辺万里氏が巻頭に掲げたエル・ブジの来歴には、少々首をひねる部分がありました。オーナーであるジュリ・ソレールは駆け出し時代のフェランに対して「僕と組んで仕事をするなら、君をスペイン一のシェフにしてみせる」と語ったとあります。元音楽プロデューサーであるジュリが実際にどういう戦略をもってフェランをスペイン一のシェフにしたのかは、この文章にはしかとは書かれていませんが、書かれていないがために、このレストランが世に広く知られるようになったのはシェフの腕前そのものよりはジュリという「プロデューサーの売り出し」がうまかっただけではないかという穿った見方を抱かせます。
著者自身もジュリのメディア戦略にのせられてしまっているのではないかという印象を与える結果となり、損なつくりの本だなという気がしました。
エル・ブリ 想像もつかない味 (光文社新書)
エルブリ訪問前の資料として読みました。「料理はおいしくさえあればよい」という考え方もありますが、エルブリの目指す方向性は、その創造性、食べた人をどれだけ楽しませ、インスパイアできるかということに向いているように感じました。エルブリの料理を楽しむためには、その意図を解釈できるような準備が食べ手にも必要であり、その準備物としては、料理の解説がされており(あるシーズンのある料理について、という限定つきですが)日本語で読める本著は役にたちました。
難点をいえば、先行者のコメントにもある通り、料理にまつわる話なので、写真がカラーであれば、と思うことと、感想ではなく、解説を主体とした本であればなおよかったかと思います。