グルダ・ノン・ストップ
90年ミュンヘンでのライヴ。録音状態は良好、DSDマスタリングされた音は一瞬スタジオ録音かと思うほどだ。
モーツァルトの幻想曲をはさんで自作曲(本作でのフォー・リコのフォーキーなタッチはキース・ジャレットを思わせる)をまず並べ、ドビュッシー、ショパン、シューベルト、そしてウィーンっ子らしくヨハン・シュトラウス2世の「こうもり」から自ら編曲した2曲、最後を民謡で締める。選曲がグルダらしく多彩。
自作の曲もアリア等美しい曲を配しており、一連の曲の流れを損なうことはない。
スタジオ録音盤のグルダ・ワークスのような振幅の大きさはないが、聴衆に心の平安とどこまでも飛翔できるかのような自由さを与える。個々の曲はオーソドックスにかっちり弾きながらいくつかの曲を続けてまるでメドレー、いや一つの曲のように表現する。グルダの個性の真髄である自由自在さが発揮された逸品だ。
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20&21番
CDを聴いて、だれかに「すばらしい。」と言わずには、いられない時がある。このグルダのピアノ協奏曲がそうだ。
グルダの演奏は、信じられないほどの展開力を感じさせる。次々に、新しい世界が広がり、たえまなく別世界につれて行かれる。
常に新鮮な感動と不思議な深みにつつまれる。それでいて、肩が凝るような重苦しさはない。
だから、何度聞いても飽きが来ない。また、アバドの指揮も秀逸であり、これも忘れないようにしたい。
このCDは、前に「ガレリア・シリーズ」でも出ていた。それが新しいリマスタリングで再発になったもので
当然、音質は格段に良くなっている。ただ、20番は21番、25番、27番にくらべ若干高域ののびが足りない気がするが、
なれれば気にならなくなる。
ぜひ、若い人にも聞いてほしいCDです。
モーツァルト : ピアノ協奏曲第23番&第26番
すばらしい演奏です。
グルダの温かみのあるピアノに加えて、アーノンクール&
コンセルトヘボウ管が積極的に加わってきます。
ここではいくつか演奏の特徴を挙げてみたいと思います。
1.グルダが鼻歌を歌っている
一人で聞いていると誰かの声が聞こえてびっくりしますが
メロディーを歌っている箇所があります。
2.オケだけの部分でもピアノが入ってくる
オケだけの部分でもグルダがアドリブで入ってきます。
好き嫌いは分かれると思いますが、個人的には好きです。
3.(26番のみ)トランペット+ティンパニの音がはっきり入ってくる。
26番は祝祭的な曲ですが、この演奏では特にトランペットとティンパニをファンファーレとして強調して演奏しています。
ティンパニのバチも硬いものを使っているようで、はっきりした音です。
モーツァルト:ピアノ協奏曲第25&27番
第20番・第21番に続くグルダ+アバド+ウィーン・フィルの演奏でこちらは75年5月の録音。
グルダはジャズも演奏するので、奇矯な面が強調されすぎるが、そういう雑音に惑わされる人は是非本作を聴いてほしい。この堂々として、かつ鍵盤の上で戯れるかのような軽快さと美しさを備えたピアノ演奏は、グルダがモーツァルトを愛する正統的なウィーンっ子だからこそ導き出された極上の音楽である。見方を変えればこれだけのオーソドックスな実力を持たないピアニストだったら、ただの変人で終わっていただろう。そういうグルダの正統派としての真価が発揮された名演。モーツァルト好きの人には一聴の価値ありの逸品だ。
第25番もよいが、モーツァルトが困窮の最晩年に作曲した第27番の余りにも澄みきった音の美しさに特に感動する。
モーツァルト・フォー・ザ・ピープル [DVD]
モーツァルトのソナタなら、ポンス、ラローチャ、ピリス、あるいはバレンボイム等とお思いの方。確かに、優等生的、正統派ばかりでしょう。が、グルダにかかれば、モーツァルトの息遣いが聞こえる。人間性溢れるグルダのひたむきな演奏、テクニックにも舌を巻かざるを得ないだろう。こんなにも、慈愛と格調、喜びと品位に満ちたモーツァルトを発見でき、しかも良質なライブ画面・音声で聞けるとは!!ベタ誉め過ぎるかもしれませんが、来日公演が少なかったがゆえに、日本では今一つの評価のグルダを再発見していただくためには、聞いて損はしない1枚。亡きグルダをしのぶ、マニアならもちろん、太鼓判の必聴版です。