ドンデスタン
'91年にリリースされた安らぎと美しさを兼ね備えた秀作です。奥様の描かれたジャケットが印象的ですが、これに惹かれて買ったのがWyattとの最初の出会いでした。
抽象的な水彩を思い浮かべさせるような印象的な繊細さや透明感を感じる音作りはやはり彼独特のものです。前衛Jazzや現代音楽的な要素を織り込んだ凝った音作りは彼の作品に欠かせないところですが、本作では他の作品に比べて控え目の観を持ちます。ここでは彼のピアノとヴォーカルが主役であり、彼のピアノが好きな方には特に大切にされそうです(私もその一人です)。
なお、この紙ジャケ版では曲順が'91年リリース時に戻っているため(意図は現時点では判りませんが)、ラストに登場して更に印象的なんですが、突如、軽快なピアノとユニゾンで歌い出される"Dondestan"にはハッとする新鮮さを感じます。このメロディを耳に残したまま、ついもう一度最初の"Costa"から聴きたくなる不思議な感覚を憶えます。
また、"Worship"の穏やかな表情や"Catholic architecture"の静かな佇まいなども魅力的ですから、コアなファンの方のみならず、より多くの方に好かれそうなスタンスを持っていると思います。
何度か聴いているうちにジャケットに描かれた風情とのマッチングにほっとした気持ちになってくる、身近に置いておきたい親しみを感じてしまう一枚です。
The End Of An Ear
70年プレスのロバート・ワアットによるファースト・ソロ・アルバム。
ワイアット(ドラムズ、マウス・ピアノ、オルガン)、マーク・チャリグ(コルネット)、エルトン・ディーン(アルトサックス)、デヴィッド・シンクレア(オルガン)らによる、充実した演奏が堪能できます。ワイアットのヴォイス・パフォーマンスやアヴァンギャルド・フリー・ジャズ寄りの演奏は、初期のソフト・マシーンに通じるものがありますが、ギル・エヴァンズのカヴァー1曲を除く全曲をワイアットが作曲し、彼自身がやりたかったことがより鮮明に伝わってくる感じです。後の『ロック・ボトム』や『ルース・イズ・ストレンジャー・ザン・リチャード』等に見られる独特のユーモアや整合感は、ここではまだ見られないのですが、若さに裏付けられた混沌としたエネルギーが聞く者の耳を捉えます。もちろんその若さゆえの稚拙さなどは微塵もなく、高度なテクニックでかなりスリリングな演奏を聞かせてくれます。初期のソフトマシーンに触れ、その感触をつかんだ方にはお勧めの一枚です。
Rock Bottom
ソフトマシーン〜マッチングモウルでのVo,Drとしてのワイアットも好きだけど、
彼の一番の傑作はこれでしょう。
アルバム通して一気に聴ける、統一感・世界観が素晴らしい。
このアルバムを聴きながら寝るのが気持ち良いのですよ。
特にワイアットのピアノが好きだ。音の選びかたが凄くセンスに満ちてます。
ロック・ボトム (紙ジャケット仕様)
元ソフトマシーンのロバート・ワイアット初のソロアルバム。パーティーで浮かれ騒いでいる最中に二階の階段から落ちて遭えなく車椅子の人になり、天才的ドラマーとしてのキャリアを絶たれた後にワイアットが垣間見た文字通り「ロックの底」。この事件によって世界は超一流ドラマーを失ったが、それがなかったら決してこのアルバムは生まれなかっただろう。