あの頃映画 松竹DVDコレクション 「震える舌」
まず、本作は初見のはずなのだが懐かしい感覚にとらわれた。
郊外の団地の風景は少し前の昭和の典型的な風景の一つだろう(私はそこで育った…)。病院も最近のドラマに出てくる変に照明の綺麗なものとはちがい、どこか古めかしく懐かしく感じる。演出も展開もどこか古めかしい。役者の演技も(振り返ってみると)オーバーアクションのような気もする。
だが、
それを吹き飛ばすような力強い独創的な恐怖をこの映画は見せる。
一言で言えば、破傷風に罹った娘とその両親の闘病記だ。
そしてその題材を『新しい恐怖映画』として創っている。(映像特典予告の監督自身の言葉より。この『新しい…』がポイントなのだろう)
舞台はほぼ病院内と団地の室内だけだ。メイン舞台である個室は、破傷風への対応の為に暗室のように光線を遮られ昼夜の区別がつかない異様な状況となる。そのホラー映画的異空間での病魔との闘いが描かれる。
有名な子役の演技は見所。発作のシーンは演出の巧みさもあって見事な説得力だ。そのほか脇役も豪華で特に女医役の中野良子が印象的だ。出番は少ないが宇野重吉の存在感も◎。そして両親もがんばっていた。終盤ほろりとさせられたのも事実だ。
そして何より観終わるとぐったりする映画でもある。
密度の高い強烈なシーンが続くのだ。とくに、脈拍が一度停止するシーンは凄まじい。(気管切開の話が出たときも辛かった…。中止でほっとした)エンドマークが出るまで「何時また発作が起きるか」と不安がつきまとう。何もないシーンでも緊張が解けない。そんな意味で息つく暇がないのだ。現代的なホラー映画とも古めかしい怪談映画とも‘種類の違う’怖さ…。これを幼少期に観たらトラウマになるのは当然だろう。(ビジュアル的にはそれほど激しくもないが暗闇に口から血を流した幼女の画面は確かに凄惨だ。)
と、ここまで書いていて気がついた。少し前に放送されていた『た●しの本当は怖い家庭の医学』の再現VTRの‘怖さ’に似ているのだ。
うちの子(小学生)はあの番組を怖がり苦手だった。「人知れず平和な日常を壊す恐怖が迫っている…。」それがこの映画の恐怖の性質の一つだと思う。
『そのまま放って置くと、大変なことになりますよ』
実のところ映画としての完成度はそれほど高いとは思われなかったのだが、演出の吸引力は並外れているし、さらに『震える舌』という異様な題名、独創的な恐怖の扱い方。カルト化するのも頷ける。DVD化で伝説となっていた本作を手軽にみることが出来るのはありがたい。
未見の方は是非
(トラウマになっては困るので大人限定で)
ノートルダムの鐘 ― オリジナル・サウンドトラック (日本語版)
ノートルダムの鐘は公開当時は全然興味がなく、
最近四季の役者さんが吹き替え版を担当していたというきっかけで買ってみましたが、
なかなかの力作です。迫力ある語りと歌唱力で音声だけで充分入り込めるし
DVDも吹き替えモードの方がはるかに良かったです。
ノートルダムや中世の町・・アニメの壮大さに負けていないし、
ディズニーキャラのタッチが苦手な人だと「劇CD」として聴く方が良いのでは?
保坂さんの声と歌が妖艶で力強いエスメラルダに完璧にシンクロしている。
オリジナルのゴッド・ヘルプも奇麗だけど、力強さなら圧倒的に日本語版ですね。
他の俳優さんもかなり良いです。オペラ座の怪人でのラウル=石丸さん他
四季のサウンド・トラック以上の実力を発揮しているし、何しろ豪華キャストです。
四季が手掛けているミュージカルの映画の吹き替えは四季のキャストにお願いしたいですね。
日本語版で生き返る作品も結構あるんじゃないかと。
歌唱力に不満が残ったバトラーさんの怪人とか。。
荘村清志最新ベスト「愛のロマンス」
荘村清志は私にギターを持たせた人です。
正確には私が高校生の頃、荘村清志のLP「GuitarRecital」(廃盤)を聴き
その中に収録されていたリュート組曲1番(BWV996)に触発されました。
当時、若気の至りで当該LPを売ってしまいましたが
歳を重ねるごとにあの演奏がもう一度聴きたく、
オークションサイトを探すなどしておりましたが
なかなか再会できないでいたところ、このアルバムを知りました。
ライナーノーツを見て驚きました。
音源は私が学生自体に聴いた「Guitar Recital」のそれだったのです。
打ち込みのような...の評もありますが、BACHはかくあるべきではないでしょうか。
同じ曲の、エルナンデス版やセゴビア版、ブリーム版も持っていますが
やはり「リュート組曲1番」ならこれです。
聞き比べて、弾き比べて、BACHを知れば知るほど
理想型と思える演奏に聞こえてきます。
打ち込みのような...と評した方は
リュート組曲1番はリュート楽曲ではなく
リューテンヴェルケ(の読みで良いのかな?)であることを知って
評しているのでしょうか?
この楽曲は本来、弦楽器用ではなく鍵盤楽器用です。
だからこそ、この演奏になるのです。