風と共に去りぬ (5) (新潮文庫)
原作も傑作。また、翻訳もまちがいなく名訳。読み終わるのが惜しいと
おもいつつ全巻一気に読み終えてしまった。
映画より原作のほうが好きな最大の理由は、ラストでのレットのセリ
フ。"I DON'T GIVE A DAMN"を大久保氏は「けど、決して君をうらんで
いないよ」と訳した。本来なら映画での字幕のように「全く関心がない
んだよ」なのだが、大久保氏のこの解釈・訳によって終わり方が余韻の
残るものとなった。こういう終わり方であれば、スカーレットがレット
を取り戻す、というのも納得できるのだ。
風と共に去りぬ ~スクリーン・テーマ名曲集 (映画音楽)
映画音楽家三人の指揮による映画音楽のベスト盤。指揮は映画音楽の巨匠のヘンリー・マンシーニが自作曲三曲を指揮。そして大脱走なので有名なエルマー・バーンスタインも自作曲四曲を指揮。それ以外の曲は「ファイナル・カウントダウン」「キングコング2」「ライオンハート」などの音楽を担当した映画音楽家ジョン・スコットの指揮です。演奏は私は存在は知りませんでしたが「ロイヤル・フィルハーモニー・ポップス管弦楽団」。このCDの解説書によればロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(こちらはさすがの私も知っていました)が母体となって生まれたポップスオーケストラだそうです。ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団イギリスの名門オーケストラでたしかイギリス三大オーケストラの中にも入っているオーケストラ。ロイヤル・フィルが母体となっているので音色もかなりのものです。そして選曲も超が付くほど有名な映画音楽がほとんどです。解説も廉価CDですが一曲一曲にそんなには長くは無いものの要点は抑えた解説です。この廉価価格で映画音楽のCDがきちっとした演奏で出ることはあまり無いと思いますし演奏も私は満足いくレベルで星五つにしました。
風と共に去りぬ (2) (新潮文庫)
1巻ですでに最初の結婚をし、一児の母となり、あっという間に未亡人になるスカーレットは、戦争中をアトランタで過ごしています。自由奔放なスカーレットでも、夫の叔母であるピティパットには表立って逆らえないところが時代を物語っている気がします。
この2巻での白眉はアシュレのクリスマス休暇の一時帰還にあり、最初に読んだ頃はちょうど恋愛中だったこともあって、スカーレットの苦しい片思いにずいぶん涙させられました。そしてどんなにメラニーが善人であっても、スカーレットの立場にいれば憎悪せずにはいられないなと思いました。
アシュレとの別離のシーンの緊迫感が素晴らしい。映画版より心理描写が細かいのでドラマティックです。
そして映画でも有名な、北軍の迫るアトランタを脱出するシーンは映画にも劣らない迫力です。南北戦争の経緯が詳細に記されています。劣勢の南部の女性たちの姿が、なんだか太平洋戦争中の日本と重なるので、アメリカ人より日本人のほうがこのあたりは共感できると思います。
日本フィル・プレイズ・シンフォニック・フィルム・スペクタキュラー Part2~風と共に去りぬ(感動とサスペンス篇)~
1980年代以降、映像音楽の録音といえば、ジョン・ウィリアムズの指揮するボストン・ポップス・オーケストラとエリック・カンゼルの指揮するシンシナティ・ポップス・オーケストラによるものが、質的に突出したものとして存在してきた。
しかし、前者に関しては、オリジナル・サウンドトラックの演奏と比較すると、しばしば、演奏に生気を欠くことが多く、また、後者に関しては、近年になり、編曲に劣悪なものが増え、指揮者も精彩を欠くようになり、徐々にこのジャンル自体が魅力を失うようになった。
しかし、今世紀にはいり、日本フィルハーモニー交響楽団によってたてつづけに録音された6枚のCDは、上記の両横綱の録音と比較しても遜色のない、高水準の内容を誇るものである。
沼尻 竜典と竹本 泰蔵という有能な指揮者の的確な演出のもと、20世紀の古典ともいえるハリウッドの代表的な作曲家の傑作の数々が実に見事に奏でられている。
これらの演奏の特徴は、あえていえば、オリジナルの魅力を過剰な演出をくわえることなくありのままに表現していることにあるといえるだろう。
いずれの作品も、世界中に配給される映像作品の付随音楽として作曲されているために、もともと高度の娯楽性と表現性をそなえた作品である。
ここに収録された演奏は、それらの作品が堅実な職人性のうえに自然体に演奏されるだけで、視聴者に無上の歓びをあたえてくれることを明確に示していると思う。
いずれにしても、20世紀後半、正当な評価をあたえられることなく、ハリウッドの片隅において高水準の管弦楽曲を創造しつづけた数々の現代作曲家の労作をこうしてまとめて鑑賞してみると、あらためてそれらが実に良質な作品であることに驚嘆させられる。
そこには、紛れもなく、最高の職人性と大衆性が見事な結合を果たしているのである。
日本フィルハーモニー交響楽団による6枚のCDには、そうした身近なところに存在していた現代芸術のひとつの奇跡が封じ込められている。