天使の事典―バビロニアから現代まで
ユダヤ・キリスト教をはじめとして、
現代に至るまで世界中に散らばった
「天使的存在者」について簡潔に説明した一冊です。
網羅している範囲こそ広いですが、
その分一項目あたりの説明は甘いです。
事典というよりは読み物に近いです。
あと、気になるのはやはりお値段。
ちょっとした専門書クラスの価格なので、
間口の広い「天使の読み物」としては高すぎるきらいが。
深く狭くお高く攻めるか、広く浅くお安く攻めるか。
見据えるターゲットがどっちつかずで、色々な意味で惜しい一冊でした。
バビロニア・ウェーブ
専門家が最後に解説しているけれど、そんなことより。SFとしては十分面白い。
ただ、選択的にウェーブから報復を受けることについて、本編で説明がなされているが、それがあまりサイエンティフィックではない気がする。その設定が、謎めいたウェーブの印象を読者に与えるが、説明が出来ないから煙に巻いた感が否めない。
最後の方で、全宇宙的に観点への脱却を読者に求める部分があるが、そこをもっと深めたらよいのではないかと思った。
でもSFとしては十分面白いと思う。日本オリジナルSFとして、世界レベルで映画化してほしい。
バビロニア―われらの文明の始まり (「知の再発見」双書)
本書は大きく 1.バビロニアの歴史 2.文字の発明 3.王とその暮らし 4.知識人たち 5.宗教と人生 に分けて解説しています。(資料篇としてギルガメシュ叙事詩の洪水物語や、人々の毎日の食事メニューが書かれたの書物の訳も載っています。)
それぞれ重要な事柄に絞って説明されているので時代背景も追いやすく自分のような初心者にはちょうど良い入門書だと思います。
また本中にはページごとに出土品や遺跡の写真が載っているのですが、人間に生を与えてくれる存在の牛や記録的な意味なのか日常生活をモチーフにした浮彫り、像の数々には圧倒されます。
愛する彼のために ~ロッシーニ : アリア&デュエット集
ヴェッセリーナ ・ カサロヴァのロッシーニを聴く。非常に奥行きのあるメゾ・ソプラノで、「セヴィリアの理髪師」(チューリヒ歌劇場)、ロッシーニ:歌劇「チェネレントラ」、ロッシーニ : 歌劇「タンクレディ」全曲(いずれもミュンヘン放送管弦楽団)などの全曲録音でも知られる第一人者。
最近、ロッシーニの歌劇は世界的に再評価されており、この曲集でもその魅力のエッセンスは十分に伝わってくる。カサロヴァの表現力豊かでよく伸びる詠唱はバックで流しているだけでもなんとも心地よさを感じる。2曲所収の「アルジェのイタリア女」を聴いていると、地中海の輝く太陽のような曲筋を南ドイツの透明感あるオケの音色ととともにコロラトゥーラの歌姫は余裕をもって歌いきっている姿が連想できる。良き選集である。
→Classique-La Discotheque Idealeでの購入も一案
ギルガメシュ叙事詩 (ちくま学芸文庫)
新訳聖書より数千年は古い、世界最古の叙事詩である。そして始まりがなんとも素晴らしい。ギルガメッシュはまだ「英雄」ではなく、力強く賢くそして暴君である。そしてそこにもう1人の英雄候補エンキドゥが現れる。彼は初め獣の人であったが、女性(娼婦)と交わったとたん、知恵に目覚める。象徴的である。そしてその表現のなんとなまめかしいことか。
彼はギルガメッシュと一対一の対決をする。そして友情が芽生える。二人は森の怪物退治の「旅」にでる。怪物を退治して帰った時、ギルガメッシュはエンキドゥの死に直面するのであった。「私が死ぬのも、エンキドゥのごとくではあるまいか」永遠の生命を求めてギルガメッシュは「第二の旅」にでる。最古の叙事詩は人間と神の契約の物語(つまり宗教書)では、戦争と平和の物語でもなく、生と死の問題を扱った素朴で根源的なロード・ストーリーであった。ギルガメッシュは結局救われることも無く最後には自国に帰っていくのであるが、旅の途中酒場の女主人の言った言葉が印象的である。最古の時から何千年間、何億人もの人間がこの言葉に自らを慰めたのではあるまいか。「ギルガメッシュよ、あなたはどこまでさまよい行くのです。あなたが求める生命は見つかることがないでしょう。神々が人間を創られた時、人間には死を割り振られたのです。生命は自分達の手のうちに留めおいて、ギルガメッシュよ、あなたはあなたの腹を満たしなさい。昼も夜もあなたは楽しむがよい。日ごとに饗宴を開きなさい。あなたの衣服をきれいにしなさい。あなたの頭を洗い、水を浴びなさい。あたなたの手につかまる子供達をかわいがり、あたなの胸に抱かれた妻を喜ばせなさい。それが人間のなすべきことだからです。」