プリンセス トヨトミ Blu-rayスタンダード・エディション [Blu-ray]
原作は読みました。制作発表時から気になっていたのは、鳥居と旭の性別が逆転していること。たしかに、天然ドジっ子の綾瀬はるかによる鳥居は可愛かったし、お好み焼きを食べ続ける可愛い女子の鳥居に癒されたの事実。岡田将生の旭もかっこよかったし、クールな感じも似合ってました。
ただ、大阪を守る男達や、女の子になりたい中学生大輔の設定からして、実は、性別というのはこの物語の重要なポイントでもあるので、途中から、話の流れは大きく変わっています。また、原作の最後に交わされる女性の旭と大輔の会話が、『大阪を守ってきた大阪国の人々、そしてこれからも守り続けられるだろう大阪国』を表現するものだけに、それがなかったのは残念でした。
まぁ確かに、豊臣家の生き残りプリンセスがいて、彼女を守る『大阪国』の設定という、その突飛かつ大スケールで驚かしておいて、それはあくまで遊び心のようなもので、この大ぼら話、能天気コメディーの落としどころを親子の絆にもってゆく。守るものがある大切さ、伝えていくという大切さ。そして、なにより家族の絆。ミクロなレベルの信頼と愛。という根本的なところは変えてありません(変えようがないか...)けどね。ストーリー知っていても感動もありますし。(笑)
ミステリとしても心憎い伏線が仕掛けてあり、ミスリードのさせかたも見事。微妙な違和感を感じさせながらも、堤真一と岡田将生のおかしな表情のやりとりで原作未読の方は思わず騙されてしまうかもしれません。
本作で人々が守るもの、それ自体に実は大した価値はないのですよ。プリンセスにせよ地下通路にせよ、それは象徴にすぎません。それを旗印に、人々が大切に思ってきたものこそが本当に価値あるものだということなんですね。その意味で、おバカコメディにベクトルが振り切れることなくリアルさをもたらした、“鬼の松平”の堤真一と“大阪国総理大臣”真田幸一役の中井貴一は的を射たキャスティングでした。
鈴木雅之監督はTV出身で、万城目学のデヴュー作「鹿男あおによし」も撮っています。その関係で、本作では玉木宏が「たこ焼き屋」のひょうきんなお兄ちゃん役でカメオ出演しています。
この監督、シーンの繋ぎやコミカルで不思議な間とかが持ち味で、万城目作品にはピッタリの監督かもしれません。新作「偉大なるしゅららぼん」もどこか「鹿男あおによし」的な作品なので、鈴木監督で映画化して欲しいですね。
偉大なる、しゅららぼん
ワケわからない設定でも本当にいいですね。
この人の頭の中を一度見せてほしいものです。
内容は簡単に言うと超能力一族の対立なんですが、
ちょっと間の抜けた感じがありながらも
真面目なノリもあって良かったです。
清子が出てくるシーンは大いに笑いました。
エピローグはぐっとくる場面もあり、
涼介が夢で見た話をするところが切なかったです。
鴨川ホルモー (角川文庫)
冗談というのは、大真面目な口調で言った方が面白い。爆笑はしなかったが、4箇所で思わず「ぐふふ」と笑ってしまった。サムシングって表現とか、チョンマゲのくだりとか。
縦軸のストーリーは、大学のサークルを舞台にした単純な大学生の片思いの交錯である。しかし、このサークルが思わせぶり。京都大学青龍会?しかもホルモーって何?たいした中身がなかったら勘弁しないぞっ(学生小説ってそういうのが多いから…)て息巻いていると、ナカナカどうして。古都京都の深遠さをうかがわせる大仕掛けが次第に明らかになる。
楽しませてもらいました。
プリンセス・トヨトミ (文春文庫)
以前、ドラマ版の鹿男に夢中になったこと、
そして自分が大阪人であるということで、この本を手に取りました。
作者が大阪出身なので、非近畿圏の作者が書く、
しつこいような(でんがなまんがな調な)違和感のある関西弁ではなく、
関西人にとって違和感の少ない、自然な関西弁で、
地元の人間としては読みやすく、親しみも持てました。
内容については、この作品ではどれを述べてもネタばれになりそうな感がありますので多くは書きませんが、
帯や内容紹介にある、「大阪全停止」というのは、全体の三分の二が終わってからのことで、
それに関する謎解きの類いもあまりありませんので、
帯や内容紹介を見て買おうか悩んでいる、という人には注意が必要かもしれません。
メインは「会計検査院から検査に派遣された三人対大阪」という構図で話は進んでいくのですが、
中盤辺りから、まさに荒唐無稽、ややファンタジーや妄想の域に入るほど、
話は明後日の方向に向かっていきます。
しかし、それも作者の歴史と大阪人気質に関する造詣の深さでなんとかカバーされ、
骨のある話になっていると思います。
特に面白いのはそれぞれの登場人物の名前でしょう。
東京(つまり東)から派遣された三人がそれぞれ松平、旭(これはファーストネームですが)、鳥居、
大阪(つまり西)に住む人々の名前が、真田、橋場、島と、
戦国時代後期の歴史に詳しい方なら、
名前だけで登場人物の大体の立ち位置がわかるような構造になっています。
話の内容的にも、歴史についてより詳しい方が、ニヤリとできる箇所が多いかもしれません。
また、荒唐無稽な話でありながらも、根底のテーマはしっかりとしたものを持っていて、
ただ作者の妄想を書いただけの絵空事に留まらない、面白い小説でした。