フィガロの結婚*歌劇 [DVD]
ショルティ指揮、ストレーレル演出、1980年7月14日のパリ・オペラ座公演のライヴ版。テレビ用の録画なので音はやや厚みに欠けるが、屈指の名盤。ミラノ・ピッコロ座の創設者であり、20世紀を代表する演出家ストレーレルの舞台が素晴らしい。茶色を基調とするどの部屋にも窓から斜めに光線が入り、フェルメールの絵のような陰影に富む。衣装の色彩がよくマッチして、茶色という色の落ち着いた美しさに驚かされる。この清楚な上品さは、17世紀のヨーロッパのものかもしれない。
今は亡きルチア・ポップのスザンナは、何度見てもその素晴らしさに胸を打たれる。2003年秋スザンナを歌う中嶋彰子は、スザンナは「すべてのソプラノのレパートリーの中で最もテキストの行数が多く、出ずっぱりで」最高に大変な役だと言う。そうだろう。モーツアルトの創ったスザンナは、人間の生命が輝く永遠のアイドルなのだから。この公演では、アリアや重唱の後の聴衆の拍手と叫び声が異様に長い。拍手が終わるまで次の音楽が辛抱強く待っている。ケルビーノ(=ケルビム=天使?小姓?)、スザンナ、伯爵夫人のアリアを、皆ここぞとばかり全身全霊を傾けて聴いているのだ。この喜びを共有することもまた、「フィガロ」にふさわしい喜びではなかろうか。
モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」、第40番、第41番「ジュピター」 ラファエル・クーベリック(指揮) バイエルン放送交響楽団/SACD
巨匠クーベリックが、1980年に、その前年まで18年間に渡り首席指揮者を務めたバイエルン放送交響楽団と録音したモーツァルトの後期6大交響曲から、第35番、第40番、第41番をカップリングした、エソテリック社リマスターによるSACD/CDハイブリッド版である。
モダンオーケストラによる優雅で大変格調高い演奏として以前より名盤の誉れの高い演奏であったが、今回、エソテリックのリマスターによって、演奏の美観がより一層高められた感じがする。
各楽器の配置が明瞭に感じられるようになったし奥行き感も高い。左右に配置したヴァイオリンが響きの一体感を高めつつ、その背後から聞こえてくる中低音の弦楽器群の音とのバランスが実に心地良い。また、木管楽器は、弦楽器の音の波の中から煌めきながら浮かびあがるようで、うっとりするほど美しい。
クーベリックがライヴで見せる情熱的な剛腕ぶりも大好きだが、スタジオ録音での知的で格調高い演奏スタイルは、永く聴き続ける録音には絶対に相応しいと思う。スタジオ録音でライヴのような剛腕ぶりを見せなかったのは、巨匠自身もそのように考えていたからではなかろうか。
ライナーノーツで諸石幸生氏が「当時のバイエルン放送交響楽団の巧さにも舌を巻くモーツァルトであり、こんな演奏を前にしたクーベリックは、満面の笑顔になったに違いないと想像力を逞しくしてしまうほどである。」と書かれているが、その言葉に全面的に頷けるような素晴らしい美しい演奏である。
エソテリック社のSACD/CDハイブリッド版は、流石に、日本を代表するハイエンドオーディオメーカーが、その威信を掛けて取り組んでいるプロジェクトだけに、発売されるどの盤も大変クオリティが高い。少量限定生産だけに、なかなか入手困難ではあるが、発売されるどの盤にも新しい発見があり大変価値の高い商品だと思う。もし気になっている演奏がエソテリック社のSACDとして発売されたら躊躇なく購入されることをお勧めする。あっという間に入手困難になってしまうので…。
Mozart: Works for Piano Four Hands and Two Pianos
テレビドラマ版の、のだめカンタービレ1話で千秋とのだめが弾いたモーツァルト「2台のためのピアノソナタK.448/375a」が収録されています。ドラマでは、1楽章しか弾いておりませんでしたが。ほか、2台のためのフーガハ長調や、連弾のソナタ4曲、テーマとバリエーション(連弾)など、この値段で多すぎるほどの曲が収録されてます。同じ値段で国内版のものより4倍程度の曲が入っているのではないでしょうか。モーツァルトの2台や、連弾の楽譜を持っていない方はぜひどうぞ。