探偵神津恭介の殺人推理6~私は殺される~ [DVD]
登場人物があまり多くないので、犯人当てのミステリーとしては物足りないかもしれない。しかし、きっちりと物的証拠を集めて犯人を追いつめる推理は、この作品ならでは。
可愛かずみの初々しい演技にも注目。冒頭の、ある電化製品を使ったトリックは単純でどこにもありそうだが、原作にはないドラマのオリジナル。ミステリーファンならこれだけでも見る価値がありそう。
松下研三役の大和田獏と研三の兄で警視庁の警部・英一郎役の岸部シローとのコミカルなやりとりが面白い。
神津役の近藤正臣のカードマジックの腕もこの作品ではかなり上達しているようだ。カードを使ったエンディングのタイトルロールは、奇術趣味をとりいれた本シリーズらしく、ラストに少し変わった趣向が凝らされているので、最後まで目が離せない。
探偵神津恭介の殺人推理11~密室から消えた美女~ [DVD]
近藤正臣主演の神津恭介シリーズ最後の作品。電車内での不可解な殺人、マンションでの密室殺人等どちらかというと地味な感じの作品である。
しかし、ストーリー自体は丁寧に伏線を拾って収束する形を取る本格ミステリーの王道。設楽りさ子(当時)の初々しい演技も見もの。
近藤正臣がいつになく気障な神津恭介を演じていて、最高だ。昨今のライトな2時間サスペンスと比べて丁寧な作りがなされている。地味だが、有終の美を飾るにふさわしい作品。
人形はなぜ殺される 新装版 高木彬光コレクション (光文社文庫)
以前ハルキ文庫で出ていたけれどもすぐに品切れになってしまって手に入れられなかった作品が、光文社文庫から再刊されてようやく入手することができました。殺人を犯す前に必ず人形を被害者に見立てて破壊し、その通りに殺人を実行するという不可解な犯人。人形の破壊が殺人の予告になってしまうので、一見するとリスクを高めるばかりに思えるこの行為に合理的理由はあるのか?っていうのがメインの謎です。殺人現場にわざわざ能面を残しておくのはなぜかっていう『能面殺人事件』と趣向は似ています。
真相にはあっと驚かされました。なるほど、こんな方法があったのですね。神津恭介よりも前に真相に気づいている人が二人もいるのが不自然だとか、ラストに向かって一直線に盛り上がるわけではなく中だるみがあるなど、欠点はあれこれ指摘できるのですが、メイントリックの鮮やかさの前には脱帽するしかありません。
白昼の死角 (光文社文庫)
実話を思わせるような、詐欺グループのものがたりです。
しかし当初の主役は線が細く、介添え役が主役になります。
そして、物事には終わりがありますが、その前に連戦連勝の詐欺師がただ一回、根本的に打ち負かされます。
すなわち、被害者がある行動をとってしまうのですが、これは一読してみてください。
フィクションとはいえ、当時における世代差の中に、人間の根柢を描いて見せて、この点通常のピカレスク・ロマンとは少々異なります。
「横浜」をつくった男―易聖・高島嘉右衛門の生涯 (光文社文庫)
高島嘉右衛門は、開港まもない慶応2年(1866)の横浜に土木建築請負業をもって挑み、僅か4、5年で莫大な財産を築いた人物でした。その私財を元手として、明治3年(1870)から6年ほどの僅かな期間に、本邦初の横浜・新橋間鉄道用地の埋立工事、ガス会社の設立、水道会社の設立、洋学校の設立などの先駆的な事業を次々と立ち上げました。
本書は、神津恭介シリーズで有名な推理作家の高木彬光氏によって、昭和54年に発表された『大予言者の秘密 易聖・高島嘉右衛門の生涯』を改題出版したものです。易断に造詣の深かった高木氏は、高島嘉右衛門に対して強い思い入れがあったようで、想像力に任せて人物像を捏造することもなく、史料を丹念にあたって本作を執筆されたことがわかります。
旧題が示すとおり、易断家としての高島嘉右衛門に重きを置いてはいますが、「横浜をつくった男」が如何なる人物であったかを知るには、恰好の入門書と言えるでしょう。