コンスエラ―7つの愛の狂気
江国香織絶賛の「ティモレオン」の著者からの二冊目。
とは言っても、これはティモレオン以前に書かれたもの。
色恋沙汰にまつわる短編集。原題も意味深だ。
「ティモレオン」の皮肉さを気に入った人なら、
この本も気に入ることだろう。
帯のレビューにあらかじめ表記されていることではあるが、
全ての短編で、男たちが愛ゆえに苦しむ。
それはもう、読んでいられないほどの悲劇。
あるいは皮肉たっぷりのグロテスクな喜劇。
それを七本連続で読むと本当にうんざりするので、
もしかすると一本ずつ読むべきなのかもしれない。
が、次の主人公はどんな落とし穴に嵌るのか、
とワクワクしてくるような人は、
ノンストップで七本制覇するのかもしれない。
「ティモレオン」と同じく、簡潔かつどこか浮遊感のある文章は、
内容と相まって、いかにも「寓話」然としている。
著者は男性。何が彼に、ここまで書かせるのか。
狂気の沙汰も金次第 (新潮文庫)
『夕刊フジ』 で連載された“物書きと山藤章二のコラボ”の筒井康隆版。
山藤章二によれば、各作家との合う合わないがあり、うまくいったときもあれば駄目だったときもあったようだ。
本作はそんな中でかなり二人の息があった好作品なのではないかと思う。
筒井氏の随筆は鮮烈で時に過激であるが面白く、筒井節全開である。
イラストとの相性は、他の作家のときは「なんとなくかみ合ってないな〜」と思うときがあったが、前述のように本作はばっちり。
“描きづらい”という理由でのっぺらぼうな筒井氏のイラストも面白い。
もう35年以上も前のエッセイだが、今読んでもそれほど古さを感じない。
このシリーズの中ではかなり良作の部類に入ると思う。
幼児性愛―狂気するペドフィル犯罪
幼児を狙った殺人から売春の斡旋、監禁や汚職など
様々な形で幼児性愛という病がからむ十近くの事件の詳細が
載っていて、「幼児性愛の歴史」といった趣になっています。
幼児性愛者の心理などにはあまり触れませんが、
事件を淡々と綴るだけでなく、ひとつひとつの事件に対して
著者の分析や問題点の提示なども含まれているので
幼児性愛という病について真剣に考えながら読み進めることができました。
ヒーローズ〜ヴィヴァルディ・オペラ・アリア集
地味な歌ばかり歌っているカウンターテナーのフィリップ君ですが、これは英雄たちのアリアということで、輝かんばかりに華々しいアリアのオンパレード!こんなアルバム待ってました!フィリップ君の歌声は、、まさしく声のストラデヴァリ!この身長、この体格、この声帯、すべての偶然が重なって,みずみずしく、清涼で、繊細で、極上のシルクのようなこの歌声が生まれるのでしょう!歌声には「もののあわれ」があり、それでいて母音の逃がし方がなんともいえず温かく、お母さんの子守唄のような温もりがあるのです。ファルセットとはとても思えません。極めて自然な歌声です。今回は内ジャケも開けてびっくり!毛並みのよい、いかにも上品なお育ちのフィリップ君の写真がたっぷり。ルックスもいいもんネ。次はヘンデルのヒーローズを期待します!
嘆きの歌/パーセル:歌曲集
パーセルをカークビーが歌う、イギリスイギリスのパーセル。歌詞の繰り返しの多い節を、微妙なニュアンスを変えながら歌っています。「狂気のベス」は、物語を語るように「嘆きの歌」や「ばらの花より」は甘ーく歌いあげています。最後の「夕べの賛歌」は、さすが、王室の礼拝堂オルガニストだったパーセルの名曲。通奏のオルガンが同じ旋律を下降している三拍子が何とも気持ちよい。一日の終わりに夕日を見ながら、何度でもききたくなります。