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もし、日本という国がなかったら 著者の意図するところは素晴らしいと思う。つまり、アメリカとイラクの戦いを宗教戦争と位置付け、非宗教的な日本こそが世界平和に貢献できるという主張である。(287ページ)

しかし、誠に惜しいことに、戦前の日本に対しての著者の理解はいかにもアメリカ人的な一面的なものに見える。

たとえば「どの国の若者も、両親や祖父母や、それより前の祖先たちの犯した罪の責任をとる必要はありません。」という舌の根も乾かぬうちに、「そのような犯罪を二度と起こさないようにすることです。(中略)(植民地主義や貧困などに苦しめられてきた国の人々には、必要とあらば手厚い支援もして)、過去の悪行を償うことです。」(155ページ)というのだ。

また、「若い人たちは、(中略)学校で軍国主義的、国粋的な教えを刷り込まれてことを恨んでいました。」(24ページ)とか、
「戦時中の日本の男に対して世界が持っているイメージといえば、容赦のない残虐行為と、敵とみなした相手への同情の完全な欠如、といったものです。もちろん、当時の日本軍の蛮行や非情さの記録を見れば、非日本人がそう考えるのも無理はないでしょう。」(258ページ)といっているが、これは日本軍に対するアメリカ人の恐怖を裏返しにした全くの誤解と、アメリカ軍と中国国民党軍や中国共産党軍による逆宣伝の結果である。
著者もアメリカ人として、アメリカの国家的な洗脳に侵されているのではないのか、と思われてしまう。
著者はこのすぐ後の文で杉原千畝を称賛しているが、それは、以上のこと(日本軍の蛮行と非情さ)を決して否定してからいっているわけではない。(つまり著者も非日本人だから、そう考えている、というわけだ。)

また、286ページでは、「天皇というものも、1868年の王政復古で明治天皇が即位するまで、日本という民族国家、つまり、日本の民衆の実質的な統一者であったことは一度もないのです。」などといって、日本史についての知識のなさをさらけ出している。

著者が日本を好きで、宮沢賢治が好きだというのはわかるのだが、戦前の日本への理解のなさ、この辺が誠に惜しく、残念である。

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