ザ・インタープリター [DVD]
愛するものを失ったという共通点を持つトビンとシルビア。第一印象最悪の二人であるが、事件の影が濃くなるに従い、その距離を近づけていく。ここで、安っぽい恋愛などを盛り込まずに、スリラー一本で話の筋を通したことで、上質な作品に仕上がったと思う。
架空の国「マトボ」、架空の言語「クー」を用いて作り出されたこの作品は、アフリカブームに乗りつつも、今の映画界における「アフリカの悲劇の商品化」とは一線を画す。アフリカの歴史をかいつまんだヒーローフィクションが世に出ないための警鐘としてもとても重要だと思う。というのも、映画界のなかでは度々そのようなことが行われてきているからだ。
ベトナム戦争や、第二次世界大戦後、史実を伝えようとする映画に人々が飽き始めたころ、ヒーローが活躍する戦争フィクション映画がつくられた。いい映画もたくさんあるが、「ディアハンター」などのように、歴史認識の繊細さにかけるものも沢山世に出ている。「ザ・インタープリター」は、過去の戦争フィクションのように、実際に存在する国や言語の使用して「本物っぽくかっこよく」することを避け、堂々とエンターテイメントとして勝負をかけているといえよう。そして、スリラーとして見ごたえのある作品に仕上げられているのだ。
国連内部での撮影が始めて認められた映画として、話題性も抜群。見て損なしの作品だ。編集でカットされたシーンと別のエンディングは、個人的に大した事ないと思うので、DVDとして手元に置く価値という点ではちょっと疑問に残るが、監督のインタビューなども興味深いので、作品の細部に興味のある人にはお勧めである。
ザ・インタープリター 【ブルーレイ&DVDセット 2500円】 [Blu-ray]
本作はマンハッタンを中心に撮られた、緊迫のサスペンスアクションだ。惜しくもシドニー・ポラック監督の遺作になってしまったが、考えてみると製作のアンソニー・ミンゲラもポラック監督と同年に亡くなられた。普段はツアー以外に入館できない国連本部で撮影し(あれはセットではない)、空撮で捉えたマンハッタンの機能的美しさや「スピード」もびっくりのバス大爆発シーンなど、今までブルーレイになっていなかったのが不思議なくらいの良作である。骨太な脚本はメイキングを観ると「その日ごとに書き足していた」そうで、誰も結末がわからないTVドラマのような慌ただしさだったようだが、そこはニコールとS・ペンだ。圧倒的な芝居で魅了させてくれる。特にS・ペンはスーツ姿のマンハッタンが似合うなあ・・・。インディペンデント作品で、かつ役も独特なことが多いので、こういうまっとうなSP役は本当にカッコいい。本作はおそらくS・ポラックだから受けたのだろうが、これからも大作での刑事役などを期待したい。ニコールも最初は単なる「追われる目撃者」だと思ったら、さにあらず。未完成脚本でインしたのに、この見事な締め方はS・ポラックの最後作として最高の終わり方だった。さりげなくシルヴァーカップスタジオなども背景にしつつ(本作はここでは撮影していない)、映画好きがハマる映像力も流石だ。特典映像は今となっては「超貴重」なS・ポラック最後のディレクションが堪能できるメイキングが必見。中国人刑事役で、クライド草津が重要な役どころを演じているのも嬉しい。待望のブルーレイで再見するのが楽しみである。作品に星4つ。
ザ・インタープリター [DVD]
国連を舞台にアフリカの某国の陰謀がメインのサスペンスに違いないが、同時に過去に深い心の傷を持つ男と女の物語でもあった。絶対「一線を越える」と思って観ていた私は肩透かしをくらいました。お互いの心を理解し傷口を癒し合える人間にめぐり合った心の安らぎを得るとこまでの関係だった。特にラストのショーンの表情に感動した。
何と言っても国連での映像は圧巻でした。この作品の見所の一つでしょう。問題解決には、両極端の解決策「外交」か「マシンガン」か。まさに今、国連の存在感を改めて考えるきっかけになるはずです。アナン事務総長が国連内部での撮影を許可しただけあって、その辺のメッセージは充分伝わってきた。
いつもと異なっていたのは飾り気の無いニコール・キッドマン。女の過去と男の過去が絡み合う、抑えに抑えたロマンスでしたが、実にゴージャスな物語に仕上がっていました。