春 プリズンホテル(4) (プリズンホテル) (集英社文庫)
プリズンホテルは1〜3を読み終えた後、面白過ぎて読んでしまうのが勿体無い気持ちすら芽生えてこの「春」(4)に進むことができず、しばらく積ん読状態にあった。
意を決して手に取ると、案の定一晩で完読した。
内容は、孝之介が文壇最高の権威である日本文芸大賞の候補になり、珍客揃いの温泉宿を舞台にそこから多くの人間模様が繰り広げられるもので、育ての母である富江への本当の気持ちが巧く表現されており感動した。
中でも、特に良かったのは52年間の懲役を務め上げ、娑婆に戻った小俣オジの男気感じる台詞であった。
「男はやさしいだけじゃいけねえ。強くって、やさしくって、辛抱のきくてえのが、本物の男なんだぜ。おめえははまだ若え。しっかり性根を据えて、本物の男になれ。そうすりゃ、銭なんざ、勝手に後からついてくる」などという台詞をくすぶっている経営者に投げかけ、励ましているシーンは何度も読み返した。浅田次郎の小説ではこうした昔気質のヤクザが粋な台詞をはく部分が特に好きである。
このシリーズ1〜4は絶対の自信を持ってお薦めできます。
冬 プリズンホテル(3) (プリズンホテル) (集英社文庫)
奥湯元あじさいホテル、別名「プリズンホテル」で繰り広げられる
ものがたり。まるで舞台を見ているかのような錯覚に陥ります。
夏~春まで全巻読みましたが、個人的には「冬」が一番好きです。
三人の悪党―きんぴか〈1〉 (光文社文庫)
イイ!これはイイ!!!小賢しいヤツらばかりがいる現代に対するアンチテーゼ。かっこ悪くても、馬鹿なヤツと笑われても、損と分かっていても、そうしなければならないことがある。得だの損だの、愛だの恋だのそんなものは小せえ、小せえ。場合によっちゃ命だって惜しくはない。何よりも大切なのは「矜持」なのだから。
秋 プリズンホテル(2) (プリズンホテル) (集英社文庫)
プリズンホテル全巻の中で、個人的にはこの(2)と(3)が特に気に入りました。(1)ももちろん面白かったけど、個性的な登場人物を消化するのが大変で、軽く楽しめたのは(2)巻からでした。(2)は他の巻と違い、小説家の清子&富江いじめがなかったのも、すっきり読みた理由かもしれません。(3)、(4)と読み進むにつれ、小説家の屈折した思いが明らかにはなりますが、それにしても、こんな暴力的な男には、どんなに、かわいそうな境遇だとしても同情できなくて、せっかく、いろんな登場人物のじーんとするセリフや行動の後でも、この小説家の身勝手な行動のあまりに腹ただしい場面が出てくるとこれまでのプラス分もマイナスになり、もったいないなーと思いました。(2)の物語設定は確かにありえないけど、でもありえない設定だからこそ面白い!!(2)はシリーズの中で最もドリフターズのどたばた系かもしれません。じーんとする場面は(3)に比べると少ないかもしれませんが、すっきり、さっぱり、笑いたいならこちらがおすすめです。ちなみに、(3)は小説家の行動が相変わらずかんに障りますが、感動的な場面もあり、爆笑する場面もあり、こちらもお勧めです。