We Love Mackey
1曲目のJUJUからマッキーとは違う世界観ですごく良いです、個人的には11曲目のmiwaの北風がとても新鮮で良かったです。1曲目から順番に聞いていき、この[北風~君にとどきますように~]で完全にノックアウトです。
*Ki-Ra-Ri*
ジャケ写よろしく彼女の笑顔を添えて差し出されたグラス一杯の
清水で喉を潤し、ふっと一息ついたかのような感覚である。
胎教音楽にも使えるのではないかと感じるほど
全編に渡ってクリアなヴァイブレーションに満ち溢れている作品。
とにかく衒うことなく自分が純粋に美しいと感じる音、
心に響くメロディーをただひたすらに紡ぎ上げていったような印象である。
例えばインタープレイの局面に入っても決して調性を逸脱することなく
慎ましやかな旋律が自然な情感を湛えながら滔々と流れていく。
デビュー前は小学校の音楽教師を8年間務めていたという異色の経歴を含め
百花繚乱の現代ジャズピアノ界にあってここまで素朴で飾らないアプローチを
聴かせるのは逆に珍しく、もはや個性だとすら感じさせる。
ところが往々にしてこうしたテイストの作品は
若い女性であることをアピールしたジャケットを含め
「ライトユーザー達の慰みもの」「単なるイージーリスニングの類」
として巷のジャズ愛好家達からは軽視されがちである。
かくいう私もゴリゴリのフリージャズを好む人間だが、こうしたサウンドは
寧ろ「ジャズ」という狭小な枠を吹っ飛ばして普遍的な音楽として純粋に評価したい。
もしもあなたが圧倒的なインプロヴィゼーションや耽溺する程のリリシズムを
期待するのならば他のピアニストの作品を聴けばよろしい。
ここにあるのは何気ない日常の隙間に滑り込むような、
日だまりとそよ風が似合う音楽である。
カエターノ・ヴェローゾの意外なカヴァーや
近年人気の高いスパルタカスの躍動的なアレンジも聴きものだが
本作では東山魁夷の絵画にインスパイアされたというオリジナル3曲が特に印象的である。
中でも「Bright Cherry Blossoms」に至っては
正に日本人にしか紡げないメロディーだなと感じさせる。
本人の純朴な人柄が偲ばれる佳曲である。