夏目漱石のこころ(新潮文庫連動DVD)
アニメになっている時点で、
原作そのままになり得るわけがないので、
物語や世界観を重視するのならば、
原作だけを読んでいれば良いと思います。
それに夏目漱石の小説の多くがそうかと思いますが、
女性の心情というものが、ほとんど描かれないため、
第三者の視点で印象がガラリと変わるところに、
面白味があるのかと……。
そういう意味では、
今回の青い文学で描かれた「こころ」は、
新鮮で良かったと思います。
なので、今回のアニメは全て、
観ると原作を読みたくなるように作ってるのかなぁ……と、
そんな風にも思ってしまっています。
とりあえずKだけが小畑キャラではなく、
井上キャラに見えて仕方がありません(笑
こころ (新潮文庫)
この作品は、上・中・下と三部に分かれています。
”上 先生と私 ”では、主人公である「私」が、先生という一人の人物に出会います。
「私」と先生は交流を深めていきますが、
「私」には先生の存在がどうしても遠く感じられます。
先生の奥さんが言うには、先生はある事件を境に性格が変わっていったのだといいます。
先生は、時折その事件の伏線となるような言動をしますが、
それを「私」には教えようとしません。
そして”中 両親と私”を経て、
”下 先生と遺書”で、現在の先生という存在を形作る出来事が、
先生を主体としてことごとく明らかになっていきます。
色々な言動や、光の加減が何かを暗示していたり、
描写などがとても卓越してます。
思っていても言葉で表現出来ないことが、
綺麗な文章でうまい具合に表されているのです。
明治時代に書かれた本なのに、こんなにも古臭くなく、
現代人に愛され続ける作品を書くことができる彼は
本当に素晴らしい。
絶対に読んだほうがいいです。
草枕(英文版)―The Three-Cornred World (タトルクラシックス )
漱石の「草枕」の英訳です。草枕を The Grass Pillow と直訳したのでは、旅という含意が English readers には伝わらない。題名は本文中の文句「三角のうちに住むのを芸術家と呼んでよかろう」から取ったものです。本書を買った理由は、冒頭の有名な「知に働けば角が立つ。情に棹させば流される」に始まる一章が英語でどう表現されているかを見たかったから。さすがにターニー先生、巧みに処理しています。それにしても、漱石は難しい漢字や漢詩や理屈が多い。英訳のほうがかえってわかりやすい。原作とターニーの英訳を読み比べると、難解な日本語も自然な英語で表現できることがよくわかり、たいへん勉強になりました。
それから [DVD]
以前古いバージョン同じDVDを買いましたがこの新しいバージョンの表紙の方がキレイ、勿論 昔買ったLaser-Diskの表紙はもっとキレイ…
この映画には画面はとってもきれいだし、藤谷美和子様「三千代役」はとっても優雅な日本女性らしい、松田優作様も本当に事業家(お金持ち)の息子らしい。
坊っちゃん (新潮文庫)
今まで読んだ漱石先生の作品の中では一番好きである。
赴任した土地に全く馴染めず、人や物に不満たらたらの坊っちゃんに妙に共感した。
こんな田舎嫌いの先生に来られたら土地の人は堪ったものではないと思うが、如何せん人間田舎は嫌なのである。
適応力の有無に関わらず適応したくないのである。気持ちは凄くよく分かる。そうさせるのは江戸っ子の矜持なのだろうか。
無鉄砲な江戸っ子である坊っちゃんも、漱石先生ならではの神経質な性格を示しているが、
他作品における神経質さほど気にはならない。
むしろ今作独自の不思議な愛嬌を帯びているように感じられる。
坊っちゃんが復讐を遂げて松山を逃れる最後も哀愁漂っていて良かった。
清への細やかな情愛にも好感が持てた。