消費増税で日本崩壊 (ベスト新書)
消費税の増税に堂々と反対するこの本は貴重である。今や消費税増税を支持する報道や出版物があふれているからである。斎藤氏は10年7月にも「消費税のカラクリ」という本を新書で出している。そうであるのに3ヶ月しか経過していない10月にほぼ同じ主旨の本が出たことにレビュアーは非常に驚いた。そういうこともあったので前著とどこが違うのかに着目しつつ読んで見た。
本の最初の部分に相次いで類似するものを出した理由をちゃんと説明している。消費税増税反対の立場でできるだけ頑張ろうという意思の表れあると説明している。
この本が前著と違うのは法人税の減税を声だかに叫ぶ経団連本部の経済基盤本部長・阿部泰久氏に取材して本音を引き出している点である。税制に興味をもつ者としてそこに意義を感じた。
斎藤氏は取材を基礎にしつつ経団連やその役員の専門家に対する発言と世論一般に宣伝する内容の微妙な違い方を指摘している。一般向けにマスコミを大動員して表面税率である40%近い数字をあげて減税を叫んでいるが、実態としてはもっと低い税率(30%前後から20%台か)でしか税を払っていない欺瞞性を許せないというのである。
消費税「増税」はいらない! 財務省が民主党に教えた財政の大嘘
著者は、いわゆる霞が関埋蔵金の発端となった高橋洋一氏だ。
元財務省の官僚で、小泉政権や安倍政権でブレーンとして活躍した。その経歴で見聞きした、あるいは骨身に染みた官僚の思考というのを随所にエピソードとして散りばめてある。
消費税増税に反対するだけでなく、日本の統治機構・手法そのものまで踏み込んだ提言をする。
個人的には、国債返済のための国債整理基金特別会計なんてものの存在を知ったのが一番大きかった。
日本独自の制度だが、なぜ諸外国にない制度なのか、と著者は問う。
本来は不要な制度を役人のエゴのために設立・維持しているとのこと。
その他にも、年金運用に役人が絡む必要があるのか等々、本当に存在を問い直すべき仕組みの存在を指摘しているのは必見だと思う。
民主党の事業仕分けが何の意味も無いことが改めて実感できた。
易しい文体で色々と解説してくれるのだが、経済関連本の初心者でもなんとか付いていけた。
ただ、言いたいことが沢山あるようで、てんこ盛りの内容になっている。
注釈や図が全くないので、少々分かり難いところもあると感じた。