千年旅人 [VHS]
辻仁成が作り出すのは儚さの世界だった。東洋的な無常観にある美しさを描く。
海も潮風も建物もピアノの音色も全てに虚無感が漂う。絵に人はいない。孤独の世界が描かれている(能登半島門前町を選んだロケハンが非常にいい)。
ツルギ、トガシ、ユマそれぞれの引き合う孤独の引力が、不思議な交わり方をし、生と死を見つめた1ヶ月。「託された想い」がそれぞれを結びつけ、つき動かす。
そう、この3人を出会わせたのは“ヨウコ”。人は死者を見送るとき、魂がこの世に残ると感じる神秘感を体験するが、残されたものたちは死者の残した情念に支配されうる。それがこの3人を出会わせた。そして、「託す思い」はラストのカットへと受け継がれる。
豊川、大沢、yuma(新人)の演技がいい。ひなびた哀愁が出せている。特に豊川は儚さや孤独という役どころはさすがだ。yumaも演技っぽくないのがいい。自然さにおいてはいい女優だと思う。悲哀や心の闇の作り方に置いて、大沢は豊川との違いを出すのに難しさがあっただろうが、役どころの「軽さ」を丁寧につくっていた。
「千年旅人」という題が見終わった後にじんとくる。
「辻」JINSEI TSUJI LIVE DVD VERSION
辻さんのファンなら必須アイテムですよ!とにかく凄く良かった。ギター一本抱えてステージに立つその姿に、「流石、辻!!!」そして、勇気あるな〜。頼もしい!!!ギターも凄かった!あんなに上手いなんて思わなかったなんて言ったら本人に怒られちゃうな〜。でも何よりも、辻さんの凄いところは、言葉に込められた強いメッセージですね。もう、感動しまくりで最高でした。「う〜っ」と胸に来た曲は最後の「ありがとう」。そうそう、アカシアも忘れちゃいけない〜。名曲です。半移民的な生活をしている私には、数々の曲が大ヒットでした。色々書いてしまいましたが、全部良かった!!!辻さんこんな凄いライブDVDをありがとう。
左岸 上 (集英社文庫)
愛して止まない兄が12歳で自殺をしてしまった妹の一生を描いた大作です。
泣き虫だった妹に、生前兄のいった、'超然’としていればいいのだと、言う言葉にしたがって生きる少女のけなげさから、駆け落ち、破局、結婚、出産、配偶者の死、母の出奔と、主人公の茉莉の人生は荒波のなかの小舟のようです。
でも一番物語が悲しみを持ったのは、兄が逝き、配偶者を失い、両親が逝き、娘も容赦ない勢いで巣立って行く中での寂しさよりも、若さも失い、自分が本当に一人になってしまったときの、茉莉の喪失感の中であったと思います。
この物語の中で、12歳で亡くなった茉莉の兄は、ずっと昔に亡くなってしまった兄という存在でなく,ずっとその声を茉莉が聞き続け、その度に、自分を取戻したり安堵したりする存在として重要な人物であり続けます。茉莉は、兄の、遠くにいくんだ、という言葉を聞き続けます。その意味も分からないまま。
一見、茉莉の若い時代の、駆け落ちや、パリでのモデルとしての暮らしのほうが、際立つ出来事のようなのですが、人生というのは、常に、流れ続け、大切な人が少しずつ、いなくなったしまうという繊細で、自分にとって重大なんだと感じ、ひどく感銘しました。
自分の人生と比べてみても、ドラマチックだったり華やかだったりする部分には人生にとって実はそれほど重大ではなくて、日々の当たり前の日常とどう対峙していって、人生をかさねるかという方がずっと重要な事なのかもしれないとわかってきました。
辻氏の、右岸を読んでいたので、呼応しあうものがもっとあるのかと思っていたのですが、両方の作品ともに、大事なところで繋がっているんだけれども、全く別々の流れを流れている。
時々の接点はあるけれど。
でも、それこそが、やがてはそれぞれの川の流れの独立しているところそのもので、人生の流れだけでなく、人との関わりも、流れる中でおこっていくのだと物語は伝えているようです。
茉莉は、やがて、一人になったときに、兄の、超然としていればいいんだという言葉の意味を改めて理解します。
それは子供の茉莉にも、中年になった茉莉にも、誰にとっても必要なことだったのかと思います。
最後に、茉莉が,兄の惣一郎のささやき、遠くにきたね、をききます。
遠くというコドバの本当の意味、考えずにはいられません。
BEST 1990-2000
彼らの音楽的実力が相当なものだとは知っておきながら、
彼らの曲をきちんと耳するのはこのアルバムが初めてでした。
南国の薫風が漂うボーカルの声が、心地よいことに心が現れ
ました。
彼らを知らぬ私には印象的な曲が少ないと感じたのですが、
繰り返し聴くたびに、心に沁みこんでくるものがあり、今は
もっと彼らの音楽に接して見たいと思うようになってしまい
ました。
「愛が走る」「路傍の花束」「声のおまもり*」「未来の君
へ」全てが名曲です。比嘉さんのあの声がこれからも日本中
で聴ける事を祈っています。(2007/01/24 修正)
嫉妬の香り (集英社文庫)
嫉妬って、一番周りに知られたくない醜い感情だと思います。
ですが、恋愛をすると誰もが経験した事のあるどうしようもないことです。
それを、リアルに描いたストーリーであり初めのスタートから主人公に入り込みます。
ストーリが自分の体験とダブル所がありとても考えさせられました。
男性、女性問わず読む価値有です。
男女のとらえ方や人生観の違いなんかとてもちゃんと表現されているので
読んでいて思わず本人になり切ります。
嫉妬を描くストーリですがとても綺麗です。