1993年、ネブラスカ州リンカーン。20歳のブランドンは男装して小さな町フォールズタウンへ向かう。そんなブランドンの行動を快く思わない従兄のロニーは「フォールズ・シティの連中はオカマを殺す」と警告する。やがて、町で地元の青年、ジョンやトムと知り合ったブランドンは、彼らの仲間であるラナという少女と恋に落ちる。・・・ ヒラリー・スワンクが、性同一障害者であるがために青年ブランドンとして生きる女性、ティーナを演じています。作品を通してずっと青年の格好を演じ続けるヒラリー・スワンクですが、その仕草や物腰はナイーブな青年そのものでした。当時はまだ「性同一障害」はきちんと理解できていなかっただけに、「変態」「化け物」「オカマ」としか扱われなかったブランドンの悲しみと苦しみが、重く伝わってきます。この物語の中で、ブランドンを「人間」として受け入れてくれたのはラナだけだ、と思うと本当にやりきれなくなりました。「男性として生きたい」というブランドンの願いが世間に受け入れられず、悲劇を生んでいく。そんな切ない話が実際に、それもつい最近あった事件だと知って、本当に胸が苦しくなりました。観た後の感想は賛否両論あると思いますが、いろいろ考えさせられる深刻な内容です。
1stアルバムに初期シングルなどを編集したアルバム。タイトル曲の「boys don't cry」は本当に何度聞いても泣いてしまう。ひたすらリズムを打ち込むリズム隊に、ロバート・スミスの甘い声が乗ったらもう止まらない。性急な曲ばかりが詰まったいいアルバムです。
ヒラリー・スワンクが性同一障害の女性役。男に生まれたかったほんとは女。オスカーとるほどの演技力って言っても、彼女が男くさいとは最後まで思えなかった。なんとなく彼女はおばさんっぽいっていうのかねえ。かといって女にしても、うーんって感じ。女優以外の職業なかったのかな。
何より衝撃を受けたのが、これが自分が生まれる前、戦時中とかの話じゃなくて、とっくにそうした問題について世間に理解が広まっていた(と個人的に誤解していた)「つい最近」の事件だということ。認識を新たにしました。観て良かったです。
「おねえ」キャラのタレントさんは大人気ですが、「彼ら」は決してそういう立ち位置に来ないのも、こうした感覚においてのことなのかもしれない。私は、個人的にはラナに共感していたので、未だにこれが「常識」なのか、というショックが、かなり大きかったですね。
作品として素晴らしいなと思ったのが、ジョン(ピーター・サースガード)の表情。彼は、女性の目からすると嫌悪感しか抱けない役割の筈、、、なのですが、ラナへの愛情の空回り、ブランドンへの友情、裏切りへの怒りが、けだるそうに細めた目の奥や、復讐し咆哮する声や表情に見事に表現されていて、男性として生きることを望んだブランドンの悲劇だけでなく、男性に生まれたジョンの悲しさまでが表現されている。モデルになった実際の彼が、どういう人物かは知りませんが、作品としてはこの配役ひとつでなにかが救われたように感じました。確かにこれは「ボーイズ」の物語なのですね。
反対に、作品として、どうか、と思ったのが、冗長になっている場面がいくつかあること。
特にブランドンとラナのラブシーンと、ジョンのブランドンへの復讐のシーンが、時間軸をばらばらにし、一度現在に戻ったのち、もう一度繰り返されるのは、たぶん扇情的なシーンをより扇情的に見せるため、でしょうけれど、この主題で、それをやると、悪趣味にしかならない。観る側としては、観るしかないのですが、これまでは純粋に応援してきたブランドンを自分が「見世物」にしているようで、なんだか、いやな罪悪感が与えられる。それで☆を一つ減らしました。
最も印象に残ったのは、空の映像の美しさです。ぜひ今度はブルーレイで「ボーイズ・ドント・クライ [Blu-ray]」観てみたい、と思いました。
しかし、星や雲やヘッドライトが高速で行き交うあの綺麗な画は、どれだけ時代が進んでも人間の本質は変わらない、という諦観が語られているようで、悲しい美しさでもありましたが。。。
性同一性障害の主人公ブランドンがラナという女性と恋に落ちる一方で、
彼が肉体的に女性であることが明らかになってしまうことで悲劇的な運命と
なってしまいます。
主人公は性同一性障害という病気であって、同性愛者とはまた違う立場にあります。
(セクシャルマイノリティというカテゴリにおいては同じ立場ですが。)
同性愛者は差別・偏見を受けやすい一方で、性同一性障害においても
周囲の理解を得ることは容易ではありません。
ブランドンが訪れたのは特にそういう意味での差別が激しい地域で
彼の肉体が女性であることが明らかにされた後の展開では思わず
目を背けたくなるシーンの連続でした。
彼がラナと恋に落ちたことは悪いことだったのでしょうか?
彼は周囲を欺いていたことになるのでしょうか?
見終わった後には実にさまざまなことを考えさせられてしまいました。
実話がもとだけに決して面白半分で見てはいけないと思います。
そうでなければブランドンに対して申し訳ありません。
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