まず、本格ミステリとしてみた場合、
なんと言っても「二重誘拐」という設定に興味を引かれる。
誘拐した子供がさらに掠われるのだ。
解説にもあるように、誘拐するのが分かれた元妻で、
掠うのは実の娘、という設定に代表されるような
人物・心理描写はやはり巧いし、引き込まれる。
ミステリとして見ると、掠った子供を尾行できるのか、
さらに監禁された子供を掠う手順などに穴が多いような気がするのだが、
人間ドラマをメインとしたサスペンスとして見れば充分な面白さは確保されている。
二重誘拐ものでは貫井徳郎の『長く孤独な誘拐』と
読み比べるのも面白いだろう。
記念すべき木枯らし紋次郎第一話「赦免花は散った」だが残念ながら TVドラマ未発表作で映画化はされているが菅原文太氏が主役で 中村敦夫氏のイメージが強い私としては一寸残念な気がする。 さてストーリーだが、幼馴染の兄貴分に騙され絶海の孤島三宅島に 流されるのだが、流人仲間と共謀して脱出し自分を騙した兄貴分を 探し出し復讐するという内容だ。 南海の楽園とはほど遠く、近年起こった島民全員島外避難のニュースを 見てもそうだが火山の爆発による溶岩の流出と毒ガス。 受刑者への銃殺刑が青く晴れ渡った空の下、9月なのに真夏の様な暑さ が非情とも思えるようなムードの中でボロボロの衣装を着た流人達 の見守る中おこなわれ、読み手のほうも汗がにじんでくるようだった。 三宅島の噴火が起き、島民たちの大混乱に乗じて紋次郎と流人グループ が脱出に成功した場面は映画「パピヨン」とアレクサンドル・デュマの 「モンテクリスト伯」を連想させた。 お花・源太の島抜け船上のまぬけな行動には笑ってしまった、流人同士の 結束の無さが一層紋次郎の孤高さを強調する様に思えた・・・。
日本の諸葛孔明こと竹中半兵衛の36年の人生。私は高校生の頃、この本を書店でパラパラ読んだら止まらなくなり、店頭で60Pまで読んでしまい、結局買ってしまった。当時、本を最後まで読んだことが無かった姉が、勢いで全部読んでしまったほど面白い。
お市の方とのロマンスなど、やや創りが多い印象を受けるが、小説としての面白さは高い。と、いうよりも題材が良いのかもしれない。青瓢箪のウツケと呼ばれた色白の美男。そのくせ難攻不落の稲葉山城を、手勢17名で落とす快挙。そしてすぐに城を返還した潔さ。プロセスこそが生きる張りという人生観。とにかくもう、こいつがカッコイイ。
歴史小説が好きで、かつ未読の方は折あればぜひ読まれたし。 何んといってもこれぞ隠れた名著。
実在人物を配しながら家光暗殺計画を阻止するための集団(一味)の活躍が面白く描かれている。意外な人物も現れ守り立てている。歴史小説153作品目の感想。2008/08/28
時代小説が好きで今までも鬼平や眠狂四朗にはまりましたが、木枯し紋次郎は特に良いです。時代小説のジャンルを超えた おもしろさがあります。名作なので全十五巻再販してほしいです。
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