<良かった点>
震災マニュアルは多く発売されているものの、震災の6〜8時間後に放射能のチリが飛んできて191万人に影響が出る可能性があるとは聞いたこともなかった。
これでは震災を免れて命が助かっても意味がない。
原発が大陸プレートの境界上に建てられているだけでも怖いのに、女性の手で握りつぶせるくらい柔らかい岩盤の上に建てられているとか、ハンググライダーで上から砲丸を落とせば屋根に穴が空くようなお粗末な構造だとか、マスコミも伝えない事実がこの本にはぎっしり詰まっている。
海外からみた自然災害リスク格付けで、ロサンゼルスが100だとすると東京・横浜は710でダントツ世界一だというのにも驚き、言葉を失った。
この本では逃げる場合と、建物の中に閉じこもって避難する場合の2通りのマニュアルが書かれており、これが一番役に立ちそうだと思った。我が家でも早速防塵マスクととろろ昆布とネコの砂を買い込んだ。
<悪かった点>
あとがきに「船瀬俊介さんには文章表現のコツを教わりました」と書いてあったのだが、教わらない方が良かったと思う。
著者の古長谷稔氏が自分の言葉で書くか、どうせアドバイスを受けるのなら最も身近にいる小若順三氏にしてほしかった。
あと無駄に恐怖心を煽るようなイラストも嫌だった。どのページを開いても恐怖に震える親子が登場し、恐怖心を煽るようなセリフを吐くので、読んでいて煩わしく感じた。むしろ淡々と事実を述べるだけの方が読み手に伝わると思う。
2011.3.14追記
福島県内の原発が爆発し、恐れていた事態が発生してしまいました。
今こそこの本を読むことをおすすめします。
身を守る方法がいくつか紹介されていますが、これは一読の価値あり!
フクシマ原発の事故から二ヶ月で出版された、小出先生の新書。雑誌のような時宜性に富み、かつそこらへんの新書より遙かにしっかりとした内容に溢れている。
ポスト・フクシマの時代をどうやって日本人が生きていけばいいのか。著者は、論理的に事実を丁寧に重ね、原発の危険性、原発推進政策の愚策ぶりを論じていく。その論調は、感情的なものはほとんど排除され、科学者の客観的事実だけを述べていくという作法にそっており、とても説得力がある。著者の誠実な人柄が偲ばれる。しかし、それだからこそ、原発の危険性がゾッとするほど迫ってくる。
著者は読者にこう訴える。 「起きてしまった過去は変えられませんが、未来は変えられます。これから生まれてくる子供たちに、安全な環境を残していきませんか」
原発は絶望的に危険極まりない。環境に優しいなどというのはまったくのまやかしであり、二酸化炭素だって大量に排出する。しかも、原発がなくても我々はほとんど電力に不足せずに生活できる。日本の社会がやってきたことは、原発に依存しなくては生活できないよう、無理矢理努めてきたことである。その結果、世界でも最も高い電力料金を支払わされ、世界をリードしてきた太陽光発電の技術もドイツや中国の後塵を拝するようになった。そして、このフクシマの事故である。
フクシマの事故の後でも、原発が必要であると思っている人は、是非とも本書を読んでいただきたい。フクシマの事故はチェルノブイリしか匹敵しない、人類最悪の放射能汚染事故である。しかし、チェルノブイルと違うのは、小出先生のような真摯な科学者が何が起きているのかを我々に解説し、その背景の問題までをも教えてくれることである。それが、ポスト・フクシマの東日本で生きていかなくてはならない人々にとってどれだけ有り難い指針となるか。小出先生の存在、そして本書のような著書の存在は本当に有り難い。東日本で生き延びようと考えている人、必読の本である。
筆者が警鐘を鳴らした、原発の危険性、地震による誘発、
それらが目の前で現実のものとなった。
そして、この本が示した「政治の欺瞞」は、いま政府が口にする
・・・直ちに人体に影響するものではない・・・・
の一言に如実に現れていると思う。
直ちにではないのなら、先々には影響するとでも言いたいのか!
今回の地震だけではく、東海地震と浜岡原発など
この本のタイトルである「時限爆弾」を我々はいくつも抱えている。
他人事ではなく自らの問題として、そして次の世代への責任として
この本を読み最悪の現実と向き合うべきだと思う。
「どんなに堤防を高くしても、それを壊し乗り越える津波が必ずやって来る。どんなに強靭な建物を作っても、自然の力には勝てないこともある」「安全には死角がある。その死角のほとんどは人的なものに起因している」。
防災心理学の本。多くの例を取り上げて説明している。要点がうまくまとまっており、大変読みやすい。著者は40年に渡って、M9.2を記録したのスマトラ島地震など多くの自然災害、テロ、事故、事件の調査をしてきた専門家。
我々の先入観とは違い、人は危機に直面しても簡単にはパニックにならない、と繰り返して強調している。むしろそこに落とし穴があり、特に集団でいる時は、それゆえに逃げ遅れてしまうことすらあるという(集団同調性バイアス)。また、パニックを恐れて行政が情報を隠したり出し渋ることについても警告している。専門家や担当者の言うことを過度に信じすぎてしまうことについても注意している(エキスパートエラー)。「生死に関することは、自分の五感で確認した情報に基づいて自分で意思決定することが大切だ」とのことである。
一方で、何かあったらまず速やかに「知らせる」ことの重要性や、災害時には「傍観者」にならずに安全を確保したら「闘う防災」を行うこと、いざという時に適切な判断ができるようになるためには正しい知識を普段から身につけておくこと、非常時には経験に縛られて硬直的に動かずに臨機応変に対応すること、震災の時には携帯電話はつながらない、建物が壊れるような地震で机の下に潜るのはナンセンス、家具は固定しておきいつでも脱出できるようにする、普段から必需品は多めに置いておく、といったこともアドバイスしている。震災の度に繰り返される「想定を超えた規模」というお役所の発言に対しても厳しいコメントをしている。
「自由や安全は、何をせずとも手に入るものではない。普段の努力があって初めて持てる権利である」とのことだ。
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