今まで何種類か飲んでみましたけど 一番飲み易かったです。
ノムさんは今まで優れた本を多数出版しているが、この本は現役時代を中心に当時の思い出を語った感じだ。 ノムさんの入団の頃からの苦闘は他の本でも書かれているが、それと対照的に六大学・甲子園のスターとして鳴り物入りで巨人に入った長嶋・王との対戦の数々。今まで色々な「プロ野球の歴史」で書かれてきた杉浦忠の「四連投・四連勝」やスタンカの「あれがボールか秋の空」、勇退するはずだった鶴岡一人監督の復帰なども「ノムラの目線」で語ると今までにない見方が多数あることがわかる。 また、1963年オフに長嶋・王・稲尾・野村の4人でヨーロッパ旅行に行っていたというエピソードがあり、これはとても面白かった。稲尾が体調を崩したことにノムさんが驚いたとか(稲尾はオフは実は結構体調を崩している。あの日本シリーズの3連敗の後4連勝もそれが遠因)、王の意外な性格とかスイスで長嶋が買った意外ものとは…など、知られざるエピソード満載だ。 いくら大記録を作っても大きく取り上げられず、そしてついに本塁打数で王に抜かれたときの心境、巨人に対しての様々なコンプレックス、先見性を発揮し続ける巨人に対してここ一番でいつもダメな南海球団、また同時代のパリーグの名選手たちの面白いエピソードも紹介してくれている。 そして、現役引退後は監督としてO・Nと対戦することになったが、ここではノムさんの闘志とID野球の戦略性で「監督としては勝った」と言えるというのはある意味痛快だ。 そうしたプロ野球黄金時代から現在までのエピソードを通じて、「O・Nと巨人」の時代と現在との違い、そして今のプロ野球には何が欠けているのかも語ってくれる。文中には色々な野球の本の引用も随所に現れ、きちんとノムさんがそれらを読んでいることもよくわかる。 総じて、プロ野球に対してのエピソードとしては非常に面白く、また分析・着眼点も優れていてさすがはノムさんと言える本だ。ただ、今のプロ野球や選手に何が足りないかという点はあと一歩な感じがする。 V9時代の巨人の川上監督がミーティングで野球の話はほとんどせずに「人間教育」をずっと行っていたというのは正直、意外な感じがする。そうした人間教育が他球団との差であり、それがなくなって巨人は凋落したというのは確かに納得はできる。ただ、そうした教育を今の人間たちに対してどうやって行っていくのか。結論が「自分たちと同じ旧人類になれ」というのでは今の人間は死んでもイヤだろう。今の若者に対して古臭くない理想とする人間像を語るのは正直・難しいのでは。 また、中日監督時代の落合に対して説教したという話は「オレ流」を貫いた落合に対して失礼な気がする。そのあたりはテリー伊藤著の「なぜ日本人は落合博満が嫌いか」が書いているとおりだと思う。
木之内みどりさんのファンは絶対に買いです。 ノムさんが本人役で出演している場面は傑作です。 日活の良き時代を感じます。
何年、何十年先を見越して、ひたすら準備をすること。例えすぐに成果が出なくても、バカにされても。
そんな教えが、野村克也という野球人生をなぞって解説されています。タイトルに「35歳までに学んでおくと」とありますが、人生哲学のような内容なので、年齢はそこまで関係ないのでは、と感じてしまいます。また、本企画を野村監督に執筆依頼した出版社・編集担当者には、畏怖すら覚えます。
本作は阪神・巨人戦の歴史の中から名場面を選りすぐり、阪神サイドから光をあてた阪神版。私は巨人ファンだが関西で生まれ育ち、毎日阪神の記事が一面のスポーツ紙を家でとっていた。したがって、阪神の選手たちにも思い入れがある。私がプロ野球に一番熱中していたのは巨人のV9中期から長嶋巨人初期にかけて毎年のように巨人・阪神が優勝を争っていた時期である。残念ながら、戦前から江川・小林の因縁の対決の頃までは、ナレーターこそ違うけど(本作では月亭八方)巨人版と同じ映像が使われている。王の素振りの場面まで本作に入れる必要があったのだろうか。この時期で巨人版にあって阪神版にないのは王の1試合4打席連続ホームランの試合ぐらいである。私が一番思い入れのある村山・江夏・田淵の映像が阪神版にしては少ないのが物足りない。
阪神版が独自色を出すのは85年から。そのシーズンのTG第1戦、伝説のバック・スクリーン3連発の第2戦など、あの年の阪神打線の凄さを見せつける試合が次々に紹介され、最後は55号を打たれないように巨人投手陣がバースを敬遠する、巨人ファンには恥かしい場面で締めくくられる。その後、阪神は長い暗黒時代を迎えるが、92年の亀山の活躍、新庄や井川の台頭、代打八木の活躍等で巨人にサヨナラ勝ちした試合が多く収録されているので、阪神ファンは満足できるだろう。巨人版ではこの頃はホームランで勝つ試合が、阪神版ではヒットを積み重ねて勝つ試合が多く紹介されている。野村監督の時代には開花しなかったそのこつこつ野球が、星野・岡田両監督の下での優勝に結びついていく軌跡がよくわかる。
本作に登場するには、魅力ある日本プロ野球の歴史を作った阪神・巨人の名選手たちばかりである。熱い対決の伝統が今後も引き継がれることを願ってやまない。
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