難しいと言えば、難しいかもしれません。でも、今までに五行という単語なんて聞いたことがない!という人でも、おそらく発見のある内容です。例えば、コラムでは、七五三や十二支や鬼門のことなど…、意外に生活に浸透しているものなんだな〜ということが分かったりします。 私が面白いなと思ったのは、国を治める人にしても、経営者にしても、本人の資質だけでなく、時代に合致しているかどうかもポイントだということ。時代が今どんな意味合いかとか、何代目なのかというところとも関係しているというのです。一般的な時代の流れを読む・・・というのとは、また捉え方が違います。時間と空間で、立体的に捉える読み方って、他では聞かないように思います。 東洋史観の基本的な考え方を記した原理部分の解説から読むもよし。実際の例の部分を読んでから、原理部分を確認するもよし。難しいなと思う人は、まずコラムを読むもよし。 陰陽五行の概念は、ないよりあった方が、思考の幅も広がります。自然の法則ですから。自分も自然の一部だということをより実感できます。何か問題に直面したときのヒントもそこにあります。自然の法則の秘密を教えてもらえる・・・そんな感じのする本です。
111年前、38才の新渡戸稲造が訪米中に、米国で出版されました。日清戦争の4年後のことです。当時既に外人知日家達の日本論がありました。しかし敢えて西洋文化に劣らない日本文化の精神の内奥を、外国人に理解させたい一心で、書かれました。矢内原忠雄の訳(1938年)が定訳。以後現代語に直す新訳が何種類も出ています。本書の特色は、現代語訳だけではありません。矢内原訳は、章名は原著に忠実です。本書では、訳底本の1969年Tuttle社版の章名を、編者の考えた題や副題に変更。また、章内を節に分け、見出しを立てています。原書にはないものです。
武士道は、武人たちの人生の根幹でした。判断基準であり、生きる理念、目標でもあった倫理体系です。その源の考察から始まり、内容徳目の「義」「勇」「仁」「礼」「誠」「名誉」「忠義」「克己」さらに「刀」「婦人の教育および地位」「大和魂」を、西洋思想と比較して論理的に記述しています。本書が出た明治32年には、既に武士階級は消えました。根を失った武士道が今後どうなるのか、著者は将来の見通しまで考察しています。自国文化への誇りと尊重に満ちていますが、西洋思想文化の身分証だった聖書の神への信仰者としての発言もあり、当時の欧米で思想として受け入れられたことが良く判ります。
自国で逸失した倫理体系を、外国語で書かれた書物から読み取る。しかし本書の編者は、ただ過去のこととして読んではいません。無責任で厚顔無恥に生きるのに平気なってしまった現代日本人。そんな人達でも、行動原理としての武士道を日々生かし、正しい姿勢で呼吸を調え丹田に気を静めれば、万が一の時には全てを肚におさめて品位ある行動ができる。そんな身体感覚を、少しでも持って生きることを勧めています。明治人が書いた日本文化の弁明書が、平成日本人への啓発の書になっています。
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