非常に冷静な視点で226事件の再現を試みていると思います。 そしてこの事件の検証を見る者に求めているのではないかと思わすほど訴求力を感じました。
226事件という言葉には、いまだに日本人の胸に錘がぶら下がるような重さを感じさせるものがあります 我々(人間の)の血の中に混ざっている暴力的な因子を見せられている面が含まれているからだと思うのです。 昭和11年2月26日。 日本は満州に進出し、国際的に孤立をしていました。 そして、日本には軍隊が存在していました。 この映画を見ると、軍隊という最も強力な暴力装置を手に入れることの危険性が認められると思います。 なぜなら226事件は軍隊なしには起こり得なかったからです。 さらに、ここで起きた「正しい事」をなすための殺戮の恐怖は日本社会に軍による支配を暗黙のうちに許してしまうことに繋がりました。 事件の首謀者たちは、純粋に国を憂い、国への忠誠を誓い、世直しの気持ちで決起しますが、手段は選ばず、大局的な計画は持っていませんでした。 今の政権が国民が苦しんでいる元凶であるとし、それを暴力で排除すれば世の中はよくなるということを目的とします。 軍人とは勇敢でなければなりません。若い将校たちの間でも決起を起こすことが勇敢さの証明のように広がってゆきます。 正しい事。勇敢さ。さらに自分達は天皇のためにという発想が日本軍にははびこっています。 天皇のため殺す。天皇に死んで詫びる。 自分達の意志ではなく大義のためであると自らの心理負担を軽くするのでしょう。 客観的にみれば、浅はかな行為として受け止めることになるのでしょうけれども、こういうことは現実の組織社会にはありがちなことです。
戦後の一貫した政策には、こういったことへの反省が大部分を占めてきたと思います。 また、世界を見れば物騒な国が沢山あることが判ります。 人間の世界で平和はありうるのかどうか、考えさせられます。
なんて素敵なんだろう。 素直に思う。魅了される。この哀しくて強い男がひとり歌う歌は、少なくとも役者が片手間に歌う歌では決してない(無論彼の歌を聴く方は承知しているでしょうが)。 この魅力はどう形容すれば良いのか… 見て感じるしかない。
「SHANTI SHANTI」をインドで行うという発表の記者会見で、ショーケンは「ボクたちが初めてビートルズを聴いた時、英語なんかわからないのに物凄く感動したように、ボクたちの演奏を初めて聴くインドの人達もきっと感動してくれると思う」というような事を話していた記憶がある。そこまで言い切れる自信に満ち溢れていたショーケン&Donjuan Rock'n Roll Bandの圧倒的なパフォーマンスを聴けるのがこの作品。ショーケンの予言通り、インドの聴衆は賞賛の拍手を送り大盛り上がりをみせている。ツイン・ギターにツイン・ドラム、さらにはバイオリンまで揃えたこの時期のDonjuan R&R Bandは最強の布陣であったし、それらをバックに従えたショーケンのロック・スピリットは間違いなくピークに到達していたと思われる。ショーケンは「太陽にほえろ」など役者としてのイメージが強い人が多いと思うが、実は日本でも五指に入るロック・ボーカリストである。感性の赴くまま動き回る独特のパフォーマンスもさることながら、バラッド曲における「心」が伝わる歌唱法は群を抜いているとしか言いようがない。一般的に、楽譜の音符通りに歌う事が「上手い」と思われがちだが、それは詩の朗読と一緒であり案外言葉は伝わらないものだ。本当の「上手い歌」とは何か…を考えた時、このアルバムでの「ハロー・マイ・ジェラシー」あたりに答えが潜んでいるような気がする。バンドも含めた怒涛のパフォーマンスと息を呑むような緊張感、そして泣きのギターとバイオリン…。濃密で熱い、素晴しいライブ・アルバムだ。
2004年2月1日のみなとみらい線開通に合わせて、大手レコード会社3社から「横浜」の名前を冠したコンピレーションが発売されました。ソニーの「横浜幻想(ヨコハマ・ファンタジー)」、コロムビアの「ハーバーライト 横浜BEST」、そして本盤・ビクターの「横浜ソウル・ブルース」です。 前2者がおしゃれできれいな観光地「横浜」をイメージして構成されているのに対し、本盤は地に足の着いた「ハマ」の香りがプンプンとただよってきます。ハマの本牧で育った私にとって、ここは猥雑で危険で楽しい「ごった煮の街」なのです。そして、そのイメージに一番近いのがこの「横浜ソウル・ブルース」です。おしゃれな「横浜」も確かに良い所です。ですが、そのウラにある「ハマ」にはもっと深い魅力がひそんでいます。すぐにこちらの「ハマ」に来いとはいいません。音楽も街も、表の「横浜」堪能してから、ウラの「ハマ」に立ち寄ってください。必ず楽しめます。でも、せっかく3社出そろったんですから、いっぺんに聴き比べてみるのもいいかもしれませんね。 最後に。この3盤全てに平山みき(三紀)さんの楽曲が収録されています。これは彼女が「横浜」「ハマ」を題材にした楽曲を多く歌ってらっしゃることもありますが、何よりご自身がジャパニーズR&Bのトップシンガーとして長年活躍されてきた証ではないでしょうか。彼女はクールでハスキーでグルーヴィー。入門編としてはコロムビアの「筒美京平Tracks」とソニーの「筒美京平を歌うアンド・モア」が最適です。体験されてない方は是非この機会に触れてみてください。シビレます、絶対!
横溝ミステリーの金字塔「八つ墓村」の1977年松竹映画版です。 2012年、さらに廉価になって再発されたんですね。 (私がこの文章を書いている時点でディスカウント込みで2,000円切っています)
洞窟という閉鎖された空間で炸裂する小川眞由美さん演じる森美也子の妖艶な怖さも素晴らしいですが、 やはり本作は山崎努さん演じる多治見要蔵に尽きると思います。 1996年の市川昆監督版を最近見直しましたが要蔵がわずかながら喋っており「あれ?」と思いました。 表情の演技だけで要蔵の残忍さ、身勝手さを表現する山崎さんのすごさを再認識させられました。
小学生だった頃、リアルタイムで見た時には怖さゆえの後味の悪さしか残りませんでしたが、 今見ると演技、演出等、表面的な怖さ以外の部分に関心させられます。 尚、犯人は同じながら解釈の違い、本作に登場しない重要キャラの登場等で 全く違う印象の原作も読まれることをお勧めします。(こちらも違う良さがあります) 又、渥美清さん演じる金田一耕助は横溝先生がイメージしたものに最も近いそうです。
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