お薦め出来る商品に入るでしょう。自身は耶蘇教仏教の何れにも属してはいませんが、人の一生にこんな生き方があっても良いんじゃないかとは言えます。そもそも旧約も新約もそれ自体が長過ぎて、また前提が不明瞭なので上のレビューにあるように全てが分かった気にはなれませんでしたが、読本として読んだ新約の各章を場面場面で描いていて、信仰に踏み込まれる方々の浅薄な言い方ではありますが確信の一助にはなると思います。私も人生一周りして涙腺が緩んだのやも知れませんが、描かれる場面で涙をこぼすことも度々でした。奇蹟の全てが聖書に描かれているのかは勿論確証はありませんが、やたらと多い秘蹟の数々もこの時代設定ならではの話で、古代の日本でも似たようなことが散々行われ、やがて体制が確立していくに連れてそれらの人々が直接的な生産に関わらないなどの理由でアンタッチャブルに貶められている過程を少し彷彿としました。それにしても同根異種の宗教同士が相争う現代、勿論11〜12世紀頃からのしこりも残ってのことなのでしょうが、私にはいい加減にしたらとの思いがこの映画の何処かの場面の御言葉の一つに喝破されていて可笑しくも哀しく感じました。6時間超という時間は本を読んだ方が良いのか映画を見た方が……?と思いましたが、映像ならではの感動は現代の空想力の乏しい方々にはお誂えかも知れません。信じる信じないは人それぞれですが、流浪の道徳律だったはずのユダヤ教から世界宗教に発展していった過程では、やはりキリストの、いやそれを取り囲む数多の人々の願いが込められて成立した信仰だと思いますので、これを見て思いを募らすのか長すぎる時を無駄にしたくないと思うか、それはあなた方自身の問題です。ただ、今後キリスト教圏を旅する方や中世の名画に籠められた背景を再確認しようとされる方には良い題材です。干支一周りの人生でわずか2年だけ、キリスト系の幼稚園に通っただけですので踏み込んだことを何も語る資格はありませんが、日々に心を悩ませて絶対者に帰依しようと思い悩む方でしたら、一度正統的なこのビデオを鑑賞して判断されても、どこぞの芸能人のお姉さんみたいな事の予防策の一つにはなるやも。あくまで信仰や信心や帰依と言うことは、皆さん一人一人の心の問題だと感じさせてはくれるかも知れません。偉そうな言い分で済みません。でも、間違いなく心動かされる面はあります。興味のある方は一度観賞しても悔いはありませんよ。
この映画の魅力はさまざま語られてますが、見逃せないのがその隠喩性。 まずは3回でてくるオートバイ。最初はロレンスを死に導き、中盤では 「Who are you?」と問いかけ、ラストは未来を暗示して去っていきます。 「Who are you?」の問いも3回ロレンスに投げかけられ、その度に彼の答えは変わります。 1度目は「イギリス人」、2度目は「ファイサル王子の友人」、そして3度目は 上記中盤のスエズ対岸のオートバイ兵士からの問いかけに対してで、この時は無言です。返答不能になってます。 ほかにも整然と行進するイギリス兵の足にオーバーラップする、バラバラのラクダの足や、 マッチの火を手で消すこと、砂漠に踊る影などなど、映像に映っている事がら以上のことを伝えてきます。 ツリー状の規律の近代国家イギリスと地下茎状のアラブ、国家と個人、精神と肉体、意志と運命、 都市と砂漠、白と黒、善と悪、そして戦争と人間、様々な二項要素を用意しながら、 ロレンスという個人のアイデンティティーをあぶりだしていきます。「Who are you?」と。 いい映画とはそういうものともいえるでしょうが、私はこの映画以上に そのような隠喩性、象徴性を感じる映画はなく、50を過ぎた今でもベスト1の作品です!
原題はただの「ギリシア人ゾルバ」。この映画を見て驚いたのは、クレタ島の住民の余所者と仲間内の異端者に対する恐るべき敵意と反感であった。
彼らは外部から訪れた我らが主人公(アラン・ベイツ)が島一番の美女(イレーヌ・パパス)と恋に落ちて一夜を共にしたと知るや、(まるでヨハネ伝第8章に出てくるような光景!)、全員で石を投げつけ、あまつさえ(まるで子羊をほふるように)ナイフで喉を切り殺してしまうのであるが、かつての華やかな古代文明をになった末裔たちがこんな野蛮な振舞いを実際に行っていたのであろうか?
もしもそうならとんでもない話であるし、事実無根ならこの映画の描き方に対してきちんと提訴するべきだろう。
それにしてももしこれが実話で、おのれが愛した美しい未亡人が村人に虐殺される現場に居合わせた物語の主人公が、何もしないで傍観していたならこれこそ天人'に絶対に許されない行為だと思う。
そしてこの哀れな未亡人役を演じるアラン・ベイツとともに比類ない人物造型を示すのはフランスから村に漂着した元踊り子のリラ・ケロドヴァ、そして表題ゾルバ役のギリシア人を演ずるアンソニークインで、特に後者の人間マグマのごとき不滅の存在感はさながら「最後のネアンデタール人」のようだ。
現世の有象無象を見下して君は最後のネアンデタール人 蝶人
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