独自の世界観とストーリーで読む人の心を掴んで離さない本作品だが、 10巻11巻と、話の勢いは停滞。
各人物の思惑が行き交い、みなそれぞれにズレているという複雑な関係は、 読みやすくは無いが、考え抜かれていると思う。
奴隷化したイムリに道具を宿せばいいじゃないという、 ミューバの相変わらずの黒発言が怖ろしい。
洞窟でわずかな休息を得たデュルクだったが、それもつかの間、伝説の「戦うイムリ」と見なされて岩山のイムリたちの元へと導かれ、否応なく彼らの激しい生き様に巻き込まれていく。
「道具」に最後の希望を託すデュルクとイムリたちだったが‥ついに支配民族カーマに岩山の居場所を突き止められ、苛烈な掃討戦が始まった。
この巻では、巻末に初めて、各「道具」名が明らかにされる。
基本の 石 土 木 金
そして 払拭 圧縮 孵化 再生 種 蟲 壊崩 破壊
ここまで読み進んできた読者には、「道具」を身体に宿すためには、何らかの「法則性」が必要とされているとわかる。
失敗すれば、身体のどこかが「異形化」してしまう危険な賭けだ。
すべてのカギは伝承の詩にあり、「守りのイムリ」の少女チムリがそれを解き明かすのか。
はたして「道具」を宿す正しい方法は?
孤独な旅を続けてカーマとの戦いを避けていた主人公の能力者デュルクは、ついにイムリのカーマへの反抗勢力「洞窟のイムリ」と「岩山のイムリ」の一族と出会います。イムリの伝承により、デュルクは否が応にも救世主として扱われ戸惑いますが…。
同様に権謀術数渦巻くカーマ陣営では策士デュガロ大師が最後までデュルクやミューバを擁護していた真の理由が判明致しますが、この一見温厚そうな老人の底知れぬ腹黒さに驚くと同時に、物語が次巻以降激しく動く予感がします。
さらに前巻で幼少時のデュルク、ミューバと同様に引き離されたイムリの双子姉妹、チムリとミムリの運命も大きく変わります。
カーマに拉致されたミムリの面倒を見るミューバが彼女と過去の自分の境遇に共通点を認めて感情移入をしつつも無意識に自分がされたのと同じ冷酷な道具としての扱いをする様子はミューバの複雑かつ屈折した性格を良く表しており、彼は今一番エキセントリックで怖い女装子でしょう。
双子のデュルクとミューバが環境と運命により表面の性格は大きく変わりながらも、三宅氏の描写力は両者の顔貌と才能、鋭い感受性に血縁を強く感じさせ、この作品の悲劇性を高めており、実に見事としか言い様がありません。
他のレビュアー諸氏がご指摘のガラナダ呪師の感情を隠した佇まいも、驚愕の最終頁も、実に今後が気に掛かります。
独特の用語や世界観に慣れると病み付きになる事請け合いの傑作大河SFファンタジー漫画です。お薦めです。
荒川弘『鋼の錬金術師』の特集号。
完結後、これほど間を置かずに他誌で特集が組まれたこと、それ自体が凄いと思う。色々な人が解説記事を書いているが、それらには興味はないので、目当ての対談記事、インタビュー記事を読む。ガンガンなどでは、これまでにも作者のコメントのようなものはあったのだろうが、コミックスでしか読んでいないので、作者自身の考えを読むのは初めてで色々と興味深いものがあった。最初から最後まで芯の通った、骨太の作品だったが、掲載していたガンガン(或いは、スクウェア・エニックス)の方はどういう風に見ていたのか、途中には、編集者の話も少しあるが、そちら側の視点からの意見ももう少し聞いてみたいと思った。
会社帰りふらっと入った本屋で見つけた、ペットリマスター版。 普段リマスターとかリミックスとかいわれても、微動だにしない我が心も 名作『ペット』となったら話は別。 さっそく電車の中で読み始めたら…冒頭の林さんとサトルの出会いでもう。。目頭が。。。 以前読んだ時のことを色々思い出してしまった、そして優しい林さんの笑顔。 この物語、自分の中で熟成されていたようで、1度目よりも2度目、2度目よりも3度目と 何度読んでも面白い。魅力的なキャラが多くストーリーも綿密、 深いマンガです。
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