~『出来ごころ』(キネ旬1位)『浮草物語』(キネ旬1位)『長屋紳士録』(キネ旬4位)の喜八(坂本武)ものの3本を含みつつ集められた10作品、これらの作品たちの公開時、戦争というものの影がどっしりと日本列島を覆っていた。戦争映画をついぞ小津安二郎は撮らなかった、というのが今でも小津が支持される理由の一つである。戦地では昂揚ものを撮るという~~話も出たが、結局、キャメラを回すことはなかった。喜八もの3本目の『長屋紳士録』は戦後復帰一作目として、父からはぐれた迷子の子供と、その子を世話するかあやん(飯田蝶子)や長屋の住人たちの人情喜劇ものであるのだが、結局子供はそこから父に連れられて去ってしまう。小津は戦前で描いた母ものから、戦後、父ものへとシフトする。この第三集はその子~~供が去っていくまでを描いているのだが、子供が去るというより、小津映画の母が去っていくまでの作品がまとめられている。 ~~ 加えて、トーキー化が加速する映画界で、茂原キャメラマンがトーキーシステムを開発するまでは俺はトーキーにはしない、と、自ら義理人情でサイレント映画の粋な表現にこだわった小津が、初めて本格的にトーキーに取り組んだ『一人息子』。近代家族の崩壊という、戦後の成熟した小津作品のモチーフが垣間見える『戸田家の兄妹』、などなど、小津安二郎を語る~~上ではどうしても欠かすことの出来ない時期と作品群でもある。小津のフィルモグラフィーでだけでなく、最高級のサイレントと誇れる作品たちは世界映画史的にみても極めて重要である。 ちなみに、『長屋紳士録』で笠智衆が披露するのぞきからくりの口上は、笠智衆ファンでなくとも必見の名シーンです。心地いいんです!~~
「東京物語」が何より最高画質で見られるのは大変うれしいことです。 できましたら、続けて戦後の全作品もブルーレイで出ないでしょうか・・
イギリスでは数年前に既に「秋日和」や「晩春」等、発売され、 「秋日和」等は本当にオリジナルなカラー、画質がこういうものか・・とびっくりしながら 見ました。 ただしリージョンの関係で、大型テレビでは見られません。
日本の普通のテレビで、小津のカラー作品、戦後作品などを高画質で見られれば・・と思います。
もとより松竹ではある時期までの作品は16ミリしか残っていないそうなのですが、 フィルムセンターなどに35ミリ版があるなら、 この110年の機会にブルーレイ・マスターで小津作品ができ得る限り発売される事をひたすら望み、 ひたすら待ちたい、と思います・・・
小津安二郎の遺作。 棒読みの台詞、真正面からのショットの連続といった小津演出の良さが いまいち理解できない私は、見る目がないのか?花嫁の父の哀愁という題材も平凡。 この平凡さが醍醐味なのだろう。
昭和十一年から昭和二十八年にかけて作られた九作品。まずお買い得。 小津作品を観た事が無くて、観たいと思ったがレンタル屋に無かったので購入。 見る人が見れば画期的なカメラワークとかが評価対象になるらしいが、技術的な事はわかりません。 どの作品も親子夫婦親戚といった、誰でも身近にありそうなエピソードをちょっと上品に描写しているのだが、特筆すべきは戦時中に発表された「父ありき」においても、国策映画的な臭いが全く無く、家族を描いている事だ。 ぶれずに家族、人間を描写するこのスタイルに痺れる。かっこいい。 そして「あの頃の日本人」の姿を作中に見出す喜び。 笠智衆さんが昔から変わらないのが、ほっこりポイントですな。
黒澤映画の後期作品は、批判的な意見が多々あるが、全盛期の娯楽作品が好きな方に多い傾向にあると思われる。しかし、同一人物でも40代と70代の時にそれぞれ作った場合、本質的には、変わらなくても表現の仕方が、かなり変化するのは黒澤に限った話ではないだろうし、娯楽性が乏しいから、ダメになったという意見は、安易すぎると思う。後期作品は、スタイルは変化したが、どれも骨太でしっかりした味わいのある映画を作っていたと思う。私が特に好きな黒澤映画は、「羅生門」と「白痴」であり、観念的な作品が好きなんですが、「夢」は、そういう系譜の作品だと思うし、後期作品の中では、一番良かった気がする。
|