最後までプリオンが本当にあるのか、それともなにかの間違いなのかわからなかった。しかし読み物としては、とても面白い。特に主人公のガイデュシェック博士はインディ・ジョーンズが実在したかのような凄い人である。 最近どうも広い意味で医学関係の本を読むことが多い。この本は「狂牛病」をはじめとする多くの病気に共通する原因物質(病原体といっていいのかまだはっきりしない)プリオン発見の物語である。 ガイデュシェック博士(ノーベル賞受賞者)という映画に出てきそうな魅力的な主人公がニューギニアで食人の習慣から移る病気クールーを知ったことから現代の食人である肉食および家畜の死体の完全な利用により広まる死病の恐怖。面白いといっては不謹慎だが。 プリオンはまだわからないことが多く遺伝子を持たないのに増える病原体といわれているが氷の結晶が成長するのと同じ増え方ではないかなどわれわれの常識に反する事であり、にわかには信じがたい。しかし科学技術の発達は常人の理解を超えており、生命の神秘もまた同じである。 章立てが良い。小説を読むように楽しめた科学ノンフィクションである。
「生物と無生物のあいだ」がおもしろかったので、
福岡氏の他の著書を、と思って手に取って見た。
本書は狂牛病問題についての論考で、論点はおおきく以下の3点。
・狂牛病蔓延の経緯と動的平衡論からみた狂牛病の意味
・病原体とされるプリオン仮説への疑義
・全頭検査緩和策への警鐘
動的平衡論からみると、狂牛病は「環境からの報復」であるという。
すなわち、
・環境と生命は「分子の流れ」によって直接つながっている。
・いわば生命は分子レベルで見れば「実体」というよりも「流れの中の淀み」である。
・草食動物の牛に、羊や牛の死体から作った飼料を与えることは、
この分子の流れに対する人為的な介入である。
・その結果「流れ」のあり方が変化し、それが狂牛病という形で露出した。
・分子の流れへの介入によって得た効率は負のエントロピーであり、
環境のどこかでそれ以上のエネルギーが失われている。
・狂牛病はその意味で負のエントロピーの代償であるともいえる。
ちょっと聞くと宗教がかっているようにもとれるが、
本書を読めば解釈としては、十分説得力がある。
環境と分子の流れを人為的に変えてしまう、という意味で、
臓器移植にも著者は疑義を唱える。なかなか興味深い観点である。
全頭検査が緩和され、アメリカ牛は2007年から輸入再開されたが、
福岡氏の主張はいまも生きている。
単に食品として安全か、というだけではなくて、
人間には何が許されていて、何が許されないのか、という意味でも
考えさせられる一冊であった。
「すべては自分に責任がある」
いろいろなところでこの言葉を聴きました。「知ってるよ」と言いたいところですがこの言葉の意味を思い知らされる内容です。
本の中に課題がたくさんあり、それを考えて書き出すのですが、反吐が出そうなほど自分のマイナス面、逃げている面と向き合いました。人生うまくいっていない時ほど厳しさをつきつけられる本だと思います。
しかし、いろいろなケースの紹介があり、進んでいくための勇気をもらえます。
自己啓発本の中では、かなり実用的です。「なるほど、考え方はわかった。それで?」で終わりではなく、次に進めます。
容赦なく専門用語が使われ、どちらかというと専門家向けの本ですが、しばらく読み進めると、パッと視界が開けます。
異常プリオンによるCJDの発症メカニズム、熱などに対する耐性、これまでに判明している病状の種類、およそ必要な情報が簡潔かつ的確に盛り込まれています。
この道では随一の専門家が、読者に媚びずに書いた力作です。
報道では見えないもの、衝撃的なルポルタージュでは知りえない真実、すべてがこの本の中にあります。
「ファストフードが世界を食いつくす」の著者が、前作発表後に世界中を恐怖に陥れた狂牛病に焦点を当てて書いた本である。前作のように現場をリアルに掘り起こす迫力には欠けるものの、狂牛病についての背景を短時間で概観できる。日本の事情についても、かなりのページが割かれている。狂牛病の直接の原因は、草食動物である牛に、牛を餌として与えるという不自然な育て方である。しかし、こうした事態が発生したより本質的な原因は、前作で鮮やかに示されたように、食品の工業化と、それを支配する巨大な食品ビジネスの存在であることは明白だ。狂牛病だけでなく雪印事件などについても触れられていて、無責任な企業の姿勢を厳しく追及している。 本書は、本来は国民の健康を守る義務のある各国政府が、農業関係者の短期的な利益を優先し、消費者の利益をまったく守ろうとしなかったことも暴いている。飼料の危険性がわかってからも、アメリカの食品医薬局は5年以上、畜牛を禁止飼料から遠ざけることができなかった。一方、マクドナルドはこれをわずか数週間でなしとげてしまった。企業の力の大きさを示す好例である。しかし、著者は大企業による食べもの支配には本質的に反対の立場で、それは正しい判断だと思える。その意味では、保健相と農業相を辞任させ、新たに農業保護より消費者保護を優先する農業栄養消費者保護相を誕生させたドイツ政府の取り組みは注目すべきだろう。 なお、ファストフードがかかえる諸問題、特に企業がいかに農業や労働者に悪影響を与えているかについては、やはり前作の「ファストフードが世界を食いつくす」をじっくりと読む方がよいだろう。
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