「薬害によってC型肝炎に感染させられていた」。この事実を20歳で知る事になりそれまでの生活が一変する。幼い頃から動物を愛し、植物を愛し当時から命への感心が強いのを感じます。自分の将来は無限に広がっている。まだある可能性を信じてヨーロッパを舞台に一人旅をする。そこで見た物や人との触れ合いで一回りも二回りも成長していく様は感動的です。そうやって手探りで生きながらようやく見つけた夢。その先に待つ障害はあまりに大きくまだ二十歳だった彼女には酷な現実です。国や製薬会社の利益や保身によって、不要な悩みで苦しみ、多くの人を巻き込み、辛い思いしなくてはいけない。そんな状況のなかでもひたむきに歩んでいく。新たな人生の中で新たな出会い。自分を支えてくれる人達との出会い。ピュアな想いは彼女に勇気を与え大きな力をくれる。薬害C型肝炎の問題は決して他人事ではないと言うこと。自覚症状に乏しく気付かないでいる人は今も大勢いるということ。感染被害の重大さを伝える本として、とても身近に感じらる内容で真剣に考えさせられる一冊だと思えます。
1989年に提訴され2006年に最高裁判決が出た「札幌のB型肝炎訴訟」は、単に札幌の5人の原告が提訴した裁判だと思っていたが、著者がB型肝炎患者救済のために提起し、弁護士と相談し原告になってくれる患者を集め提訴したものであったことをこの本で知った。この裁判は17年にもおよび、2006年に最高裁で集団予防接種をB型肝炎の感染原因と認め、国の責任を認める判決が出た。著者は本書の中で「B型肝炎のゆえに、病院でも経口感染でもするかの如き差別をされ、過度の安静を強いられ、人生を狂わされたB型肝炎患者の救済は急務であると考えた。」と、提訴に至る思いを述べている。著者である美馬医師がいなければ、この裁判は無かったのだろう。また、本書には具体的な医師名、地名、病院名、患者名まで記載があることにも驚いた。17年にも及ぶ「札幌のB型肝炎訴訟」で最高裁判決を勝ち取った著者は、B型肝炎もC型肝炎も同じ「注射器肝炎」として、今度はC型肝炎解決に臨んでいる。本書の最終章は、「いつまで国民を騙し続けるのか」との章題がつけられている。
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