巧みなストーリー展開と読み易さで、引き込まれたまま一気に読みました。が、途中 までパズラー的な読み応えだっただけに、不条理感漂うオチには正直ガックリきました。 私は賛否でいえば否のほうです、残念ながら。 しかし、前半の仕掛けには全く気付きませんでした。それを違和感なく読ませる技量は 素晴らしいものです。思わず必死に読み返していました。 途中まで5つ星の展開でしたので、着地さえ決まっていれば、、、残念です。
このシリーズも本編だけでも50巻を超えました。毎回毎回素晴らしいミステリーの短編が紹介され、非常に楽しみなアンソロジーになっています。今回も、粒ぞろいの10作品が所収されています。
「ラストドロー」(石田衣良)「蕩尽に関する一考察」(有栖川有栖)「招霊」(井上夢人)「盗まれた手紙」(法月綸太郎)「瑠璃の契り」(北森鴻)「死者恋」(朱川湊人)「絵の中で溺れた男」(柄刀一)「走る目覚まし時計の問題」(松尾由美)「神国崩壊」(獅子宮敏彦)「Y駅発深夜バス」(青木知己)
どの作品を取っても本格ミステリーの楽しさを満喫させてくれます。
個人的には、「瑠璃の契り」の雰囲気が大好きです。
「蕩尽に関する一考察」「走る目覚まし時計の問題」の犯罪ではない軽さもいいです。
どの作品を取っても実に印象的な作品ばかりでした。
兎に角、突拍子もない発想自体が凄いと思います。 設定が有り得無いだけに、展開なども有り得無いのですが、それを引っ張って行って、最後まで一気に読ませる旨さが有ります。 散らばって収拾がつかなくなるのではと思いましたが、纏めて来る辺りが井上夢人の凄ところ。
この作品はやり込めるか、それとも投げ出してしまうか。人によって大きな差が出そうなタイプの本です。 主人公は指定されたページの選択肢を選び、さらに選択肢で指定されたページへ飛び、さらにそこでも選択をして別のページへ飛んでいく・・・ 読み方、選び方次第で読む人ごとに何通りもの違ったストーリーが展開されていくわけで、発売当時は画期的な小説でした。バッドエンディングももちろん用意されています。しかし、ページを飛ぶという行為がいちいち次のページを探さなければならないという行為に他ならないので、ゲーム版RPGと違い、これがなかなか面倒なことなのです。ストーリー自体は岡嶋二人らしい機知に富んだものなのですが、そういう面倒な側面があるので、そのストーリーにはまり込まないとこのRPG小説を途中で投げ出してしまうという危険性があります。 本という体裁でRPGをやるという事の難しさを教えてくれる一冊です。 ストーリーそのものは秀逸なので一度トライされてみてはいかがでしょう?
『小説現代』での連載を経て,10年04月に書籍化.文庫化に際して上下巻に分冊されました.
前フリ的なものがまるでなく,いきなり作品の中にポンと放り込まれたように始まる物語は, その状況が,中心人物であり,同じく何も知らされずにその場に投入される男性と被るからか, 一体感にも似た感覚で引き込まれていき,混乱,翻弄される様子に何とも言えぬ緊張を覚えます.
また,話の流れにスピードがあり,早い時点でおおよその世界観を見せてきたかと思いきや, 次々に目先を変え,膨らませる手法は,その先への予想がつかず,ページを繰る手が進みます.
エンタメ,SF路線を走るかと思わせておいて一転,シリアスな方へと傾く終盤は正にそれで, 自分の置かれた状況に絶望し,したからこそ,社会との繋がりを強く求める一人の女性の姿は, 全体の雰囲気を落ち着かせるとともに,改めてこの世界で起きていることを認識させられるよう.
中盤以降,少しばかりダレた部分はあったものの,広げていったあれこれが散漫になることはなく, うまく下巻へ引っ張った最後,『事の始まり』への疑問,果たしてどこへ行き着くのかが楽しみです.
ただ,限定版のイラストカバー(大型帯)については,あまり作品の雰囲気に合っていないのでは….
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