森田監督の色なのだろうか。なんとも捉えどころの感じではあるが、古いコメディ映画の匂いを感じさせ、続編を見てみたいと思った。かなわないのが残念・・・。
2人の鉄道男子が主役の作品。会社員の小町(松山ケンイチ)と、鉄工所2代目の 小玉(瑛太)は、電車の車内で偶然出会い、それから仲のよい友人同士だ。 2人の共通の趣味は、鉄道好きだが、仕事に趣味にと人生を楽しんでいるが、 オタクの弱点である異性との関係に悩んでいる。デートの最中でも、自分の世界に 入り込んでいる2人のオタクは、女心が分からずに途方に暮れる。彼女の告白よりも 気動車の動力音に興味がいってしまう場面では、笑いが出る。
鉄道を主題にしている作品だが、そのインパクトは弱く、都内そして近郊を走る 鉄道、そして、九州の鉄道が複数登場するぐらいで、肝心の人間ドラマも薄い感じがした。
作品に登場する鉄道オタクは、紳士的な連中が多く、自分の主張で固まった者ではなく、 相手の意見も尊重する大人のマニア的な連中なので、好感的に見える。 全体的にはのんびりした雰囲気の作品で、安心して鑑賞出来るのは、本作品の魅力かも知れません。 (少し退屈ですけど・・・) 作品中に登場するHOゲージの大型のレイアウト(鉄道模型)。 アレ・凄いと思いました。高額な大人の玩具という感じで、西鉄の車両も走っています。 九州の会社の社長の持ち物だが、業者に組み立ててもらった物らしく、壊れても自分で修理が出来ない。 関東人からすると、西鉄の車両の鉄道模型なんて珍しいと思いました。西鉄の車両と京急の車両が 平行で走っている場面では、変な感じ。
映画を見て是非DVDも欲しくなりました。 私も鉄道が大好きなので、楽しく見られました。 何度見てもおもしろいです。
この小説の場合は映画の方が原作になるので、気になる方はまず何はともあれ映画を観ることをお勧めします。
まあ、内容はほぼ映画に沿って展開されるので、評価はイコール映画の評価ということになりますよね。それで 『僕たち急行』を記憶に留めたいと思ったら手にとれば良いのではないでしょうか?値段も最近の文庫本にしては 比較的良心的ですし。
映画のようにガンガンと電車が出てくる訳では無いですが、映像でうっかり見逃したり、勘違いしていた人間関係や 心理描写などがおさらいできるので、純粋にお話として楽しめると思いますよ。個人的には小町くんと小玉くんの 不思議な共同生活のシーンなどは、何となく好きです。
まあ、映画で指摘されているとおり、話としてはうまくいきすぎるきらいはありますけど、昨今流行った裏切りや人間 の汚さ、他人を信用しないことを強調する作品ばかりでは、あまり良いニュースの無い世情とシンクロしすぎて、自分の 心まで荒廃してきそうなので、たまにはこんな安心できる作品も必要なのではないでしょうかね。
電車云々が注目されがちな作品ではありますがそればかりではなく、私としてははこんな人間ドラマもありかなと結構 楽しみました。
本作は自身も鉄道ファンだという森田監督が、長年温めてきた企画らしい。 特典映像のインタビューでは「ようやく僕の時代が来たかな」と語り、 また「出来ればシリーズ化したい」と目を輝かしていたのが印象的だ。
正直、個人的にはここ数年の森田組の仕事で「これ!」というシャシンが なかったので、本作の出来は嬉しかったと同時に、大変な日本の財産を 失ったのだなあ・・・ということを改めて感じる。
肩ひじ張らないスタイルは「間宮兄弟」のようなノリだが、演じる主演 ふたりが「旬」のマツケンと瑛太コンビだけあり、暖かだが締まった作風を 醸し出していた。 貫地谷しほりや村川絵梨、近野成美といった若手から伊武雅刀、笹野高史、 そして松坂慶子までこれだけの布陣が助演で揃えば、まあつまらなくは ならない(笑)。
誰も悪人は出てこないし、また丸の内の大企業と蒲田の町工場の コントラストを上手く使い、最後は大団円にまとめるところなども流石だ。 鉄オタムーヴィーではなく、きちんと社会性のあるシャシンになっている のが凄いのだ。
独特なカメラワークや小津作品のような会話のテンポ、そして森繁作品への 敬意まで、監督はもしかしたら「何か」を感じていたのかもしれないね。 Nゲージを前にした主演ふたりとピエールの会話シーンなんて、あんな 撮り方観たことが無い!
特典ディスクはDVDでメイキングと森田監督インタビュー、それと監督の いないイベント映像集が収録されている。 最後に「ありがとう、森田芳光」とクレジットに出るが、特典映像では そんなに感傷的な場面はない。こういう爽やかな送り方が似合う監督 だったからね。星は4つです。
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