相関関係と因果関係を都合のいいようにごちゃまぜにして論理展開する政治家やコンサルタントの話を聞いていれば直感でウソを見破れると自信をもっていましたが、実は自分では高い精度で理解していると思っていた科学的なテーマで大きな勘違いをしていたうえに理解の仕方もいい加減だったことに気がついて、赤面させられました。
何年か前に狂牛病の原因としてプリオン関連の初期の報道を読んだとき、自分なりにわかった気になってしまい、その後の進展を吸収する心の窓が完全に閉じてしまっていたのです。
「蛋白質の二次的立体構造上、物理的に鏡像体が発生可能で、その量が一定レベルを越えれば、自己触媒によって増殖し、化学的には機能しないので病変となる。まあ、ありえそうなことかな。」というのが浅はかな認識でした。
本書では、現役の科学者が、実験的な事実とまざまな理論的可能性を順をおって紹介し、わかっていることと確定できないことを峻別して正確に論述してくれます。専門家の業界外の我々に、これほどややこしい問題をこのボリュームで教えてくれる力量に感謝です。
頭はもっと使わないといけません。
中年以降になって不眠症となり、悶絶しながらそれでも意識ははっきり保った状態で死を迎える、そんな病気がある一族に繰り返し発生します。
果たしてこれがウイルスが原因なのか、遺伝なのか?
そしてニューギニアのある種族に発生する、クーリーと言われる病気との不思議な類似性。
そしてその病気を追いかけていくと、「食人(カニバリズム)」と言う習慣が浮かび上がります。
現代ではほとんどの種族でカニバリズムは行われていませんが、過去に於いては、どこの種族にも見られるごく普通の習慣でした。これが狂牛病を引き起こした原因と結びつくことを、予想出来た人はほとんどいないでしょう。
そう言った意味ではとにかく衝撃的です。
国内の狂牛病問題が深刻化し、一般の方々でもBSE関連本に興味を持たれる 機会も増えてきているかと思う。 だが、この病気は極めて難解でかつ新しい分野であるが為に、その指南書を 選出するのは決して容易なことではない。 本作は一連のプリオン病をその発見当初からドキュメンタリータッチで描いている点が他の学術書と大きく違う。 まるで良くできたSF小説を読んでいるかのような読者を引き込む魅力を持ちつつ、その手の作品でありがちな誇大解釈はやや抑えられている感がある。 また感心するのはプリオンに関するデータが同関連書の内で他に見劣りしない、ともすれば優秀なものだということだ。 プリオンをめぐる実際に起こった関連事件を経時的に追ってゆく手法も見事だし、要所要所ではややフィクション的な演出があるが印象は悪くない。 何より最後まで読者を掴んで離さないパワーは賞賛に値するだろう。 これから興味をもってプリオンを調べ始める方には是非お勧めしたい一冊である。
狂牛病についての知識があまりなかった自分にとって、狂牛病の経緯・社会背景を知ることができた。また人間に感染し、変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)をもたらすことの恐ろしさを認識した。狂牛病が世界的な社会問題となる所以を理解できた。狂牛病は「異常プリオン蛋白質」が原因と考えられているようである。本書で多く引用されている「死の病原体プリオン」(リチャード・ローズ)も、今後読み進めていきたいと思った。
正しく生きても生きなくても不運はおきるし幸運もおきる。同様に、戦略的に生きても生きなくても不運はおきるし幸運もおきる。だから人は人生に悩む。いったい何が真実なのかと、どうすれば幸福になれるのかと。生き方の拠り所としてこのような本を人は読む。人生の幸福のマニュアルを探して。しかし行き着くところは、どうすれば幸福になれるかと思い悩む。幸福とは何かを考えずに。それが人間だから。だから、思い悩んでも自立して正しく生きること、これが大事ではないかな。
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