時代小説が好きで今までも鬼平や眠狂四朗にはまりましたが、木枯し紋次郎は特に良いです。時代小説のジャンルを超えた おもしろさがあります。名作なので全十五巻再販してほしいです。
記念すべき木枯らし紋次郎第一話「赦免花は散った」だが残念ながら TVドラマ未発表作で映画化はされているが菅原文太氏が主役で 中村敦夫氏のイメージが強い私としては一寸残念な気がする。 さてストーリーだが、幼馴染の兄貴分に騙され絶海の孤島三宅島に 流されるのだが、流人仲間と共謀して脱出し自分を騙した兄貴分を 探し出し復讐するという内容だ。 南海の楽園とはほど遠く、近年起こった島民全員島外避難のニュースを 見てもそうだが火山の爆発による溶岩の流出と毒ガス。 受刑者への銃殺刑が青く晴れ渡った空の下、9月なのに真夏の様な暑さ が非情とも思えるようなムードの中でボロボロの衣装を着た流人達 の見守る中おこなわれ、読み手のほうも汗がにじんでくるようだった。 三宅島の噴火が起き、島民たちの大混乱に乗じて紋次郎と流人グループ が脱出に成功した場面は映画「パピヨン」とアレクサンドル・デュマの 「モンテクリスト伯」を連想させた。 お花・源太の島抜け船上のまぬけな行動には笑ってしまった、流人同士の 結束の無さが一層紋次郎の孤高さを強調する様に思えた・・・。
小説の前半で二つの殺人事件とその容疑者の死が描かれ、後半を事件に疑問を抱いた休職中の刑事が独自に捜査したものを上司に報告した「特別上申書」という形で構成されていて、前半が問題編、後半が解決編といった具合です。
通常、こうした場合に刑事がなぜ事件に疑問をいだいたのか?というのはある種のパターンがあって、例えば、捜査中は無関係だと思っていた人物が被害者と関連があったことが後から分かる、などというのがよくあります。この作品では再捜査を決意させる展開 が実に上手い。そして恐ろしい。ある意味事件そのものより恐ろしいかもしれません。この作品にはこうしたパターンのひねりが随所に見られ、小説として深みを与えています。これが処女作というのだから、「笹沢左保」はただ者ではありません。
この作品、いわゆるトリックが満載。アリバイ、密室、暗号など、処女作だけあって作者に意気込みが尋常ではありません。しかし、この作品の最大のみそはそこにあるのでなく、別にあるのです。ややもするとトリック満載の本格物は「はたして、犯人はそんな面倒な方法で人を殺すだろうか?もっと簡単な方法があるのでは」という突っ込みが入りがちです(第二作の「霧に溶ける」はこうした問題が顕著です)。もちろん、この作品もそうした部分がない訳ではないものの、最後に明かされるミソの部分が上手く機能して「こうした犯人ならこうしたこともするかもしれない」と思わせて、リアルティを確保している部分がすばらしいです。
私的オールタイムベストには必ず入れる一品です。復刊されたのは、喜ばしい。
もっとも、今持っているのは旧光文社版。以前は角川版も持っていたのですが笹沢氏が亡くなられた時に布教(笑)のために知人にあげてしまいました。という訳であくまでレビューは旧光文社版についてになります。
で、早速、新版を本屋に注文しました。来るのが楽しみ・・・
「それにしても赤丸,美濃一国とは小さいのう」.若い頃から行動を共にした赤丸とのこの会話こそが,半兵衛という人物の大きさを物語っている.
竹中半兵衛は天下を動かす軍師であり続けた.
貴公子然とした美男であり背も高いが,色が白くて青みがかってる『青びょうたん』であった.そんな彼には大望があった.重役や武将に昇進するといった立身出世はどうでもよく,国も城も必要ない.ただ天下の情勢に影響するような戦いに臨み,大軍を思いのままに動かすのが半兵衛の夢だった.事実,稲葉山城を見事に乗っ取るが,あっさりと主君の斎藤龍興に返してしまうし,秀吉の下についた時にも,あえて余人でもできそうな小荷駄奉行を希望する.そこには現世的な欲望が一切無い.半兵衛にとってやり甲斐のある仕事は,天下統一を実現させる作業そのものであり,報酬は天下統一に成功することだった.
「欲と野心のために苦難の道を歩み,生き続けてゆこうとする者どもこそ哀れ」といった半兵衛の生き様に,自然と共感を憶える.
実在人物を配しながら家光暗殺計画を阻止するための集団(一味)の活躍が面白く描かれている。意外な人物も現れ守り立てている。歴史小説153作品目の感想。2008/08/28
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