こうした古いスタジオ録音では、おそらく、存分に味わうというわけにはいかないのでしょう。それでも、二十世紀を代表する名ヴァイオリニスト、ハイフェッツ(旧ロシア、現リトアニア 1901-1987)の凛とした音の輝き、目くるめく素早い弾きっぷりにわくわくさせられる小品集。格別、フランツ・ワックスマンの『《カルメン》幻想曲』での演奏は、ノイズが入った録音の古さを超えて伝わってくる演奏の輝かしさに圧倒されましたね。聴いていて、ぞくぞくしました。
収録された演奏の録音データは、下記のとおり。
◎サラサーテ『ツィゴイネルワイゼン』 1951年6月16日、ハリウッド
◎サン=サーンス『ハバネラ』 1951年6月18日、ハリウッド
◎サン=サーンス『序奏とロンド・カプリチオーソ』 1951年6月19日、ハリウッド
◎ショーソン『詩曲』 1952年12月2日、ハリウッド
◎ベートーヴェン『ロマンス 第1番』『ロマンス 第2番』 1951年6月15日、ハリウッド
◎ブラームス『ハンガリー舞曲 第7番』 1953年12月9日、ハリウッド
◎ワックスマン『《カルメン》幻想曲』 1946年11月8日、ニューヨーク
また、参考までに、現代のヴァイオリニストから見たハイフェッツの演奏に対するコメントを記しておきます。(『アート・オブ・ヴァイオリン』のDVDから)
<ハイフェッツの音の秘密は、運弓の速さにあります。弓を弦にあまり押し付けず、素早く動かすのです。ロシア風の奏法です。弓を素早く動かすと、凛とした音が出るのです。>・・・・・・イツァーク・パールマン
<ハイフェッツの音はクリアーで、音符が一音ずつ、はっきり聴き取れます。完璧じゃありません。よく聴くと、時々、音符が抜けてます。勢いよくすっ飛ばした感じ。なのに、完成されています。>・・・・・・ヒラリー・ハーン
私の持っているオルガン付の盤は、LONDONレーベル(ポリドール発売)の、「PURE GOLD CD」と銘打たれたものですが、録音は同じものだと思います。(1982年6月録音のものです。万が一違っていればコメントお願いします。)
各楽器のバランスにとても気を使っている演奏・録音だと感じました。 例えば第一楽章第一部の 4:20 あたりからの山場では、録音によっては裏の旋律が消し飛んでしまっているものもある中、この演奏では全ての楽器の音がしっかりと分離して聴き取れる。サン=サーンスの構築美があますことなく堪能できます。裏でホルンあたりが「ぱぱぱーん、ぱぱぱーん、」って響くのを聴くと、思わず涙ちょちょぎれちゃいます。 オルガンも、爆音ではなく、あくまでオーケストラとマッチする程度に抑えて録音されていて、バランスをとても大事にしている録音だと思います。 やはり「オルガン付き」と銘打たれた交響曲なので、ちょっと聴くと、カラヤンやオーマンディの「爆音系」オルガンに圧倒されてしまうんでしょうが、爆音系も確かに悪くないんですが・・・ デュトワ盤は、決して「うおおオルガンすげえぞ!!」という録音ではありません。しかし、サン=サーンスの職人的な作曲魂、モザイクを積み上げて大伽藍にしたような構築美・様式美を、隅から隅まで堪能できる名盤です。私にとってはマスト盤です。
私はこのオペラに関してほかの音源を知りませんので、このDVDについての主観的評価です。 それは衣装がきれいで、地味ながら音楽が素晴らしいということです。 話は「エリザベス」以前のイングランドで、エリザベスを知っている方なら すぐにピンとくる内容です。 サンサーンスがイングランドを舞台にしたオペラを書き、演出は英国の堂々としたもので衣装は フランスのテイストが入ったオペラといえばわかりやすいでしょうか? 第二幕の最後にヘンリー8世と愛人(アン、エリザベスの生みの親)の蜜月のシーンを象徴するようなバレエは 全く、音楽のみで男女二人でなされる踊りは、それ自身見ごたえもあり、意外と長い時間です。これはおまけ的な要素で 3幕の婚姻無効の裁判のキャサリン(スペインから嫁いできたお妃)のアリアはとても美しいものです。このオペラ全体に キャサリンに関してはすごくきれいな音楽が割り当てられており、 ヘンリー8世についてもCMで使えそうな、隠れた名曲があります(これはあくまで主観)。 そして最後の4幕のフィナーレでのアンを試すときのハープと合唱の一体となるところから三重奏にかけてとても良い。 実際に、全体のバランスの良い作品であり、演出は飛びぬけていると思いますし 照明やカメラアングルはずば抜けており、当日客席で見るよりもうまくまとめられている気はします。 このオペラは イングランドの歴史(イングランドとスペイン)をフランスの作曲家がまとめ上げたところに 独自性があるのかもしれません。英国の作曲家ではこうはいかないと思わせる何かがあります。 題名で引くというより、積極的に購入されて見ることをお勧めいたします。 映像の解像度、音とともに損はないと思います。オペラにおけるバレエとしては量は多いほうだと思います。
イギリスのヘンリー8世の離婚と再婚を巡る事件を扱う宮廷物ですが、 音楽的にも、劇としても、散漫な印象です。 舞台装置、衣装などは、本格的で、豪華です。 キャスティングもずれがなく、ヘンリー8世などは、実にそれらしいです。
『動物の謝肉祭』は1985年4月西ドイツ、『フェルディナンド』と『動物の祈り』が1981年4月、『小さな悲しい音』が1987年1月オーストリアで録音。
まず驚いたのは日本盤は2種類のライナーが用意されていて、一つは大人用(変な表現だが・・)一つが子供用になっているところだ。子供用は絵本のようになっていて、大きな字にルビがふられ、とても可愛らしくオトナでも読みやすい。こういう細やかな気遣いに感心した。
演奏はもうホントに完璧だ。まあ、ヴァイオリンがギドン・クレーメルでピアノがマルタ・アルゲリッチとネルソン・フレイレ。そして何と言ってもチェロがミッシャ・マイスキー。もうここまででどんな『動物の謝肉祭』になるのか予想がつく。面白いのが11曲目の『ピアニスト』。わざとへったくそにチェルニーを弾いてみせるアルゲリッチとフレイレの芸達者ぶりに思わず大笑いしてしまった。よほど年小の頃にチェルニーに恨みがあるに違いない。
そして13曲目の『白鳥』。何と高貴な演奏だろう。この曲はミッシャ・マイスキーのためにあるような曲だ。彼のコンサートでアンコールに弾いてくれたこの曲は今でも忘れがたいほどの名演だった事を思い出してしまった。彼のモンターニャ製のチェロの美しさ、そして彼自身の心の優しさがにじみ出るような演奏だ。
こんな凄い『動物の謝肉祭』を作ってしまうアルゲリッチに感服である。
|