氏の「街道をゆく」シリーズの特徴の1つとして、歴史上、有名でなくても、済州島やモンゴル、日本では十津川等々、少数民族あるいは人々が暮らす地域を訪ねるものがあります。この類のシリーズ本に共通するのは、それらの人々に注ぐ著者の暖かな眼差しです。
この巻も、冒頭、わざわざ、「はるかな地」という章を設けているように、中国の中でも、色々な意味で、奥深い処にあり、少数民族が暮らす「四川省」「雲南省」を訪れたものです。やはり、特徴的なのは、それらの人々に注ぐ著者の暖かな眼差しで、氏の名文とも相まって、心豊かにさせてくれるものです。
ただ、諸葛孔明らの有名な人物、都江堰という古代のダム、填池と呼ばれる興趣を感じる湖等、興味深いものも紹介されているのですが、やや、知的刺激という面で、小粒な感がありましたので、星は4つにさせて頂きました。
湾岸戦争と同じ時期に発生した事故と知りましたが、私の記憶にはこの事故は残っていませんでした。数ページにわたって写真が挿入されています。雪をかぶった美しい山の姿、チベットの自然に綺麗だなぁ、と思った次のページには、遺品の数々や寝袋に包まれた小さな遺体。そのギャップに心を揺さぶられました。しかし出会ってよかったと思える一冊になりました。
旅に出たときに写真に収めた花が見られ満足。しかし何度も見ることはない。
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